「シニア起業」で成功する人・しない人/片桐実央

 

 

 50~60歳代の方の企業サポートを専門とされている方による、シニアのための起業指南です。

 若年層の起業でも言われますが、シニア層の起業の場合は、

  好きなこと・やりたいこと
  お金になること・市場性
  得意なこと・できること

の3つが重なり合う分野で起業をすることを特に強くススメられています。

 というのも、それ以下の年代と比べて、起業のためのスキルを身に付けるための時間が少ないこと、リスクの許容度が低いこと、またすでに何らかのスキルの蓄積があるはずで、それを活かすことでスムーズに採算ベースに持っていくことが見込めるから、ということです。

 また、ガツガツ稼ごうとするのではなく、生きがいを求めながら、老後の資金を確保できる程度の利益を上げる「ゆる起業」を勧められていて、特に体調面との折り合いをつけながら、細く長く続けて行けるような方策を紹介されています。

 また、特徴的だったのが、「出口戦略」が下の年代の起業と比べて重要度が高いということで、採算面や体力面で事業から撤退せざるを得ない時に、どういうカタチで事業を畳むかということを織り込んでおく必要性を強調されています。

 シニア起業は、国の支援施策も手厚くなっており、充実した生活を送るためにも何か考えてみたいところですね。

 

 

「IT断食」のすすめ/遠藤功・山本孝昭

 

「IT断食」のすすめ (日経プレミアシリーズ)

「IT断食」のすすめ (日経プレミアシリーズ)

 

 

 最近はスマホ依存みたいなことも言われますが、この本はオフィスにおける過度のIT依存の結果、却って生産性が低下しているということで、「IT断食」によって企業の本来の活力を取り戻そうという趣旨です。

 元々業務の効率向上ということで導入が進められてきたITで、確かにある部分では圧倒的に効率が上がったのですが、逆にITが導入されたために発生した仕事もあり、トータルで見るとパフォーマンスが低下しているのではないか、と指摘されています。

 例えばメール処理なんかで、自分にはあまり関係のないモノがCCで送られてきて、全く無視をするわけにも行かず、時間をとられてしまうということがあります。

 またパソコンに向かって何かをしていれば仕事をしたような気になったり、サボっているのをゴマカしやすくなったりもするようです。

 でもそれよりも一番の弊害として、本来一番重視すべき顧客対応のための時間が蔑ろにされていることが挙げられるということです。

 そういう意味で、一旦「IT断食」をしてITがない状況に立ち戻り、その上でどれくらいITを自分の仕事にITを取り入れたらパフォーマンスを最大化できるのか、ということを探ってみることをススメられています。

 ITに使われるのではなく、パフォーマンスを最大化するためのツールとして「使う」ことを意識しないといけないようですね。

 

中年がアイドルオタクでなぜ悪い!/小島和宏

 

中年がアイドルオタクでなぜ悪い!

中年がアイドルオタクでなぜ悪い!

 

 

 元々、プロレス関連のライターで、最近はアイドル関連のライターとして活躍されている方の「アイドルのススメ」です。

 この手の本、何冊かこのブログで紹介していますが、結局自分の好きなアイドルのことを垂れ流して…ということが多くて、正直この本を手に取ったのも「コワいもの見たさ」的なところがあるのですが、アイドル関連の記事を手掛けられていることもあって、抑制が効いていて、かなりマトモな読み物として成り立っています。

 前半は、アイドルオタクとしての「あり方」を紹介されていて、アイドルオタクの楽しみ方や、「中年」アイドルオタクとしての家族の冷たい目への対処など、他のアイドルオタク本でも取り上げられている話題が並びます。

 後半は、アイドルオタクなのにそれを仕事とするアイドルライターをしていることの葛藤を描きます。

 アイドルライターをする場合、オタクとなるくらいじゃないと勤まらないと言われているそうなのですが、ただオタクとしての「推しメン」を持つことと、ライターとして、その「推しメン」との距離感をどう取るのか、ということの難しさを語られます。

 まあ、大部分の人にとってはどうでもいいことなのですが、ちょっと今回のアイドル本は、フツーの人にでも興味を引く部分があるのかな、と感じました。

 

 

橋を架ける者たち/木村元彦

 

 

 オシム本でしられる木村さんですが、最近ヘイトスピーチに関する著作が続いているようで、その流れで在日コリアンのサッカー選手に関する著作です。

 ワタクシ、この在日コリアンのサッカー選手関連の本に興味があって、このブログでも韓国人スポーツライターの慎武宏さんの著作なんかを紹介しています。

 この本では、在日コリアンの中でも特に北朝鮮代表としてW杯にも出場したアン・ヨンハ選手やチョン・テセ選手や仙台で活躍するリャン・ヨンギ選手が、苦難にめげずプロとして活躍する姿を追います。

 特にアン・ヨンハ選手は、在日コリアンたちが希望を抱けるようにと、北朝鮮代表としてW杯でプレーできるようにと期待に応えるための努力の健気さに泣けます。

 あと、ただ有名な選手だけを取り上げて…に終わらないところが木村さんらしいなと思うのですが、国として独立していない民族単位で戦うCONIFAワールドカップという大会に、在日コリアンで構成されるFC KOREAが挑む姿を追います。

 あと、2015年に浦和レッズのサポーターが“JAPANESE ONLY”という横断幕を掲げた問題について、そのやり玉となったとされる、同じく在日コリアンである李忠成選手の苦悩についても触れられています。

 多様性を体現するということで「橋を架ける」と表現されているのですが、こういう著作が広く認知されることで、少しでもヘイトスピーチを始めとするレイシズムが払拭されることを祈って…

 

 

急いてはいけない/イビチャ・オシム

 

 

 元サッカー日本代表監督のオシムさんのインタビューをまとめた本なのですが、今年になって出版された本です。

 今頃?と思われる方もいらっしゃると思います。

 でも、オシムさんのインテリジェンスって、何か知的好奇心をくすぐるところがあって、手に取ってしまうのです。

 一応、様々な人からの質問に答えるというカタチをとっているのですが、語られていることは昔話に終始してしまっています。

 これって、話を引き出す側の怠慢としか思えません。

 オシム氏に寄生している田村修一というフランス語ができることしかウリのないライターが延々と延命策としてやっているとしか思えません。

 同じくフランス語を話すんだけれども、オシム氏と仲が良くないという、ハリルホジッチ乗り換え損ねたんでしょうけど、いつまでもオシム氏を食い物にするのは止めてほしいものです。

 

通訳日記/矢野大輔

 

 

 ザッケローニサッカー日本代表監督の在任中、通訳を務められていた方の、通訳在任中に書かれていた日記を集めた本ということです。

 元々、出版を意識して日記を書かれていたわけではないということと、出版が決まった後もそんなに大きく手を入れたような感じでもないので、激動の日々を追ったモノの割には淡々としたトーンで進んでいきます。

 とは言いながら、ザッケローニ監督が目を付けた選手の実名がパラパラ出てきて、そこまで出していいの?ということもあります。

 先日、日本サッカー界で活躍した通訳の方々のインタビューを集めた本を紹介しましたが、個人的には「通訳」としての矢野さんの本音みたいなものも期待していたのですが、そういう「通訳」としての記述はほとんど見られませんでした。

 というのも、矢野さんはザッケローニ監督とホントにいい関係を築かれていたようで、かなりスムーズに通訳としての職務をこなされていたようです。

 まあ、結果としてW杯では残念な結果に終わった訳ですが、現代表の体たらくをみていると、ザッケローニ時代の美しいサッカーを憧憬する次第でした。

 

スカウト/安倍昌彦

 

スカウト

スカウト

 

 

 未だにスカウト志望だというスポーツジャーナリストの方が、数々の名スカウトにインタビューした記事を集めた本です。

 元広島の苑田さんや元ヤクルトの岡林さんなど、そこまで野球に詳しいわけではないワタクシでもその活躍を覚えているような元スター選手だったスカウトもいれば、何とか野球に関わった仕事がしたいということで球団になんとかもぐり込みスカウトになった人もありということで、いろんな経歴の方がいらっしゃるようです。

 岡林さんのコメントで面白かったのが、スカウトになった当初、自分の選手を見る際のモノサシが国内最高峰のプロ野球選手だったので、目当てとなる選手を見に行っても魅力がまるで分らなくて困ったということで、自分のモノサシのレベルを下げるのに時間がかかったということです。

 これだけ情報のやり取りの仕方が多様化し、かつ容易になった現在でもスカウトの方々は全国くまなく選手をナマで見るために飛び回っておられるのが少し不思議な気もしたのですが、モチロン、ナマでみる方が情報量が多いのは間違いないと思うのですが、見られていない時でもちゃんと取り組める選手なのか、また土壇場になったときのその選手の野球への取組の姿勢だとか、そういうココロの部分はナマじゃないと見れないようで、技量そのものよりもそちらの方がプロとしては重要である場合も少なからずあるようです。

 それでもなかなか才能を開花させる選手の数は多くない訳ですが、それだけに手掛けた選手が成功した時の喜びは如何ばかりかと思うと、著者の安倍さんが、今どこかの球団がスカウトとして雇ってくれるといったら、今の仕事をすべて放り出して転身するというキモチもわからないではないですね。