カリスマ編集者の「読む技術」/川辺秀美

 

カリスマ編集者の「読む技術」 (新書y)

カリスマ編集者の「読む技術」 (新書y)

 

 

 『夢をかなえるゾウ』の水野敬也さんを発掘したことで知られる凄腕編集者による「読む技術」です。

 編集者だからおっしゃるワケではないと思うのですが、このご時世になっても、やはりインプットとしての読書と言うのは不可欠だということで、とりあえず月に10冊読むこと、それがインプットとしての出発点だということです。

 そうする中で自分なりの本を選ぶ「軸」を見出し、その上で自分の読書のポートフォリオを時折見直して手薄になっているところを意識して補っていくということを繰り返すことでインプットが充実してくると言うことのようです。

 まあ、こうういと当たり前のことばっかり言っているように思えるかもしれませんが、最近、自分の本を出版したからだと思っていたのですが、著者と読者の間に介在する編集者の動きが感じられるようになった編集者の動きに触れておられたり、編集者としてのテクニックということで、短時間で著者の言わんとするところを汲み取るための読み方を紹介されていたりと、ひょっとして入門編を意図して手に取った人には、ちょっとキビシいんじゃないかと思えるほど、ある程度以上に読書経験を積み重ねた人が、自分に足りない部分を認識するためにあるような内容になっています。
 
 あー、またガンバろ…

 

日本人のための英語学習法/松井力也

 

日本人のための英語学習法 (講談社学術文庫)

日本人のための英語学習法 (講談社学術文庫)

 

 

 音楽評論家を経て高校の英語教師となられたという異色のキャリアを持つ方の著書ということで、俄然期待を抱きながら手に取ってみたのですが、まあ結論からいうと、ガッカリとまでは言わないまでも肩透かし感は否めない内容でした。

 “日本人のための”ということなんですが、基本的に日本人と欧米人とはコトバに対する発想の仕方が根本的に異なるので、例えばドイツ人が英語を習得しようとするのに対し、日本人が英語を習得しようとするのは遥かに高いハードルがあるということです。

 ということで、日本人が英語を習得しようとすると、そういう発想法を根本から見直した上で取り組む必要があるということのようです。

 というのも、英語を始めとする欧米人の発想としては、出発点としての“I”つまり自分と言うのものがあって、自分自身が「世界の中心」という発想があるのに対し、日本人は「自分」というモノが比較的相対的な位置づけということもあって、ある意味180度発想を転換しなくてはいけないようなこともあるようです。

 ということで、そういうことを踏まえた“転換”ができれば、英語の修得は比較的簡単なんじゃないか、ということなんですが、根本の発想を真逆にするって、それこそ至難の業だと思うのですが…

 

サラリーマンは早朝旅行をしよう!/日本エクストリーム出社協会

 

 

 このブログで、朝活の本は誰が書いても一緒、ということを、散々の朝活の本を取り上げながら、似たようなモノしかなかった反省からボヤき続けておりましが、ようやく画期的な本を見つけましたので、紹介致します!

 ちなみにこの本の著者である日本エクストリーム出社協会は、“朝活”とは一緒にしてくれるな、と本の中でもおっしゃっておられますが、それは小賢しいスキル向上と捉えられたくない、という意味だと察せられ、「人生を充実させるために朝の時間を充実させる」ための活動と言う意味ではリッパに“朝活”と言えるということで、画期的な「朝活本」として紹介させていただきます。

 で、朝の時間に何をするかと言うと、グルメや様々なアクティビティ、更にはショートトリップまで朝の時間を活用してやってしまおうという大胆な提案です。

 ワタクシも朝活の人として、勉強やランニングなど、結構いろんなことをやってきたつもりですが、グルメや旅行はさすがに思いもしませんでした!

 例えば、早朝に築地まで出掛けて、評判の店で朝食を食べてから出勤しようだとか、羽田空港で飛び立つ飛行機を見ながら24時間営業の名店で朝食を食べようとか、更には箱根などに前泊して、温泉に入った上で朝食を食べながら出勤しよう等々…レジャーを楽しむのに週末の休日を待つ必要はないんじゃないの?という極めて魅力的な提案です。

 こうすることで、ストレスフルな会社生活から一旦ココロをリセットすることができますし、そのことでヤル気も充実しますし、ということで、ちょっと早く起きるだけで、こんなにも充実した世界が広がる可能性が横たわっているということで、これまで読んだ本の中でも5本の指に入るほどの“目からウロコ”の本でした。

 

経理部は見ている。/楠木新

 

経理部は見ている。 (日経プレミアシリーズ)
 

 

 『人事部は見ている。 (日経プレミアシリーズ)』など人事関連の著書で人気
の楠木さんが、今回は経理部を語ります。

 それにしても、『人事部は見ている。 (日経プレミアシリーズ)』と言うタイトルも怖かったんですが、オビにも「ある意味、人事部より怖いかも…」みたいな煽りがありましたが、このタイトル、人によってはホントに背筋が凍る想いがした人もいるかもしれませんね…

 で、今回の本はそういう背筋が凍りそうな人たちの生態を取り上げます。

 要するに、如何にして経費をゴマかそうとうする人たちのやり口とともに、それを如何にして経理部の人たちが見破っているのかということを紹介しています。

 以前、税務調査関連の本をこのブログで紹介しましたが、経理部の人たちも似たような性向があるようで、経験から何かオカシな経費請求を見ると無意識に反応してしまう性があるようで、おそらくそれは経験に裏打ちされたカンなんでしょうけど、さらにそういう所で引っかかったモノについては徹底的に調べ上げてしまうようです。

 ということで、こういうことはバレますよ、という警告であると共に、会社ではおカネにキレイな人であると思われることが意外な程のメリットがあるということも指摘されています。

 くれぐれも、この本を経費をゴマかすための手口の参考書とされることのありませんように…(笑)

 

 

本物のビジネス英語力/久保マサヒデ

 

本物のビジネス英語力 (講談社+α新書)

本物のビジネス英語力 (講談社+α新書)

 

 

 長らくロンドンの銀行で勤務されていた方による本なのですが、ちょっとタイトルは「卑怯」です。

 というのも「英語力」と言いながら、実際の内容はグローバルビジネスの場におけるコミュニケーションの「お作法」ともいうべき本で、著者の久保さんも、コミュニケーションのツールとしての英語の運用力よりも、如何にコミュニケーションを図るか、というスキル自体の方が重要だと強調されます。

 久保さん自身初の著書みたいで、本来なら「コミュニケーション力」を前面に出したいと思われたはずなのですが、編集者に「英語力」の方が売れますよ!と強く出られたら、敢えて押し返せなかったと推測できますが、読者としては釈然としない人も多いんじゃないかと思います。

 というのも、この本のメインとなる読者層は、ある程度以上英語でのコミュニケーションができるスキルがすでにある人で、それを使って如何にコミュニケーションをとるか、ということがテーマなので、内容が素晴らしいだけにちょっと残念な想いが残ります。

 日本人のグローバルビジネスの場におけるコミュニケーションと言うと、積極的に発言ができないか、もしくはそれを過度に意識したがゆえに、ミョーにアグレッシブになるか、ということがあるようですが、やはり言いたいことを言うにしても相手をリスペクトして、メンツをつぶさないようにしながらも、ちゃんと言うべきことは言うというバランス感覚が重要だということです。

 また、日本人の細やかさは、どっちかというとマイナスの側面ばかりが日本国内では強調されがちですが、グローバルなビジネスの場では、そういうことを意識できる人が少ないがゆえに、そういったスタイルでのコミュニケーションが高く評価される場合と言うのもあるようで、そこは日本人なりの強みとして活用して行くべきだ、ともいえます。

 ということで、タイトルと内容のアンマッチという側面はあるものの、特にグローバルの場でビジネスをしないといけない人には、是非とも一読しておいて欲しい一冊だと思います。

 

 

自己啓発の時代/牧野智和

 

自己啓発の時代: 「自己」の文化社会学的探究

自己啓発の時代: 「自己」の文化社会学的探究

 

 

 常見さんの自己啓発に関する推薦図書ということで手に取ってみたのですが、見てみたら社会学のセンセイの著書ということでイヤな予感がしたのですが、ビンゴ!でした…

 あとがきに編集者からクソ面白くない文章を書いて!的な批判をされたって書いてありますが、だったら何とかしろよ!と言いたいところですが…

 切り口としては、なぜ自己啓発がここまで広まったのかということに対して、社会がそれを求めている…じゃあ、なぜ社会がそういうことを求めるようになったのか?ということで切り口は面白くて、それに沿って、自己啓発本の傾向を分析しているのですが、結局結論として何が言いたいのかよくわからなくなってしまっています。

 就活の自己分析シートなんかが契機になっているようなことが書かれていて、自分の適性を活かすことで生産性を上げようということもあるのかもしれませんが、結局センセイ自身がどういう結論に至ったのか、わかりません。

 こんな論文で学位が取れるもんなんでしょうか…

 

 

女子と就活/白河桃子+常見陽平

 

 

 「婚活」の白河さんと「自分探し」の常見さんがタッグを組んで女子の「就活」について語ります。

 白河さんがこれまでの「婚活」関連の著書で散々おっしゃってこられたように、最早専業主婦になるというのは幻想で、これから就活をしようとする女子学生の方々
にとって、かつての腰掛的な就職と言うのはありえない、ということをしっかりとアタマに置いておかないといけないということを強調されます。

 その上で、ご自身は子供を持たないままとなった白河さんご自身が、多少の後悔も込めて、仕事も結婚も子供を持つことのすべてを含めて、これからの女性の「幸せ」があるということで、如何にしてこれらをすべて十全に享受できるようにするのか、ということについて、ある意味男性よりもずっと戦略的に就活に取り組んで行く必要があるのか、ということを語られます。

 その中で印象的だったのが、女性にとって「働きやすい」企業を選ぶ必要がある、というのは議論のない部分だと思うのですが、その「働きやすい」という部分が、バリキャリ志向の方だったら、産休のブランクがあってもハンディが無いようにバリバリ出世できるように働けるということを考えるでしょうし、逆に出産後、ある時期までは子育てをメインに考えたいということであれば、時短勤務などを重視されるでしょうし…ということで、社会全体として、それぞれのニーズに見合った働き方ができるような状況が実現するように、もっともっと環境を整備していく必要があるんだということのようです。