アンガーマネジメント入門/安藤俊介

 

アンガーマネジメント入門 (朝日文庫)

アンガーマネジメント入門 (朝日文庫)

 

 

 何冊か著書をこのブログでも紹介している、安藤さんですが、どうやらこの本の元になったのが処女作のようです。(加筆して文庫化されたものです。)

 基本的に書かれていることのアウトラインはこれまで紹介してきた本と、あんまり変わらないのですが、個人的にはこの本が一番分かり易いかな、と思います。

 というのも、アンガーマネジメントの考え方自体を順を追って紹介されているのですが、それぞれのフェイズにおいて、身近に感じられるように「怒り」への対処で失敗したシーンが描かれており、その時にどう対処すればよかったのかについて、アンガーマネジメント的なレクチャーが行われているので、非常に分かり易いモノとなっています。

 割とどの本も大枠の内容としてはそんなに変わらないので、文庫本でもありますし、アンガーマネジメントについて知りたいなら、この1冊がおススメです。

 

期待はずれのドラフト1位/元永知宏

 

 

 『Number』で取り上げられていたので手に取ってみたのですが、どうやら中高生位をターゲットにしたと思われるジュニア文庫の1冊でした。

 「期待はずれ」とありますが、この本で取り上げられているのは、メジャーも経験した多田野だったり、ひと頃は巨人のくろーざーを務めた河原だったり、どん底の時代の阪神のエースの藪だったりと、それなりの実績を残された人が多いのですが、まあ、ドラフト1位だともっとできただろ、と言われると「期待はずれ」とされても仕方がないのかな、という…まあ、中高生にほぼ無名の選手の、ただただダメダメな苦労話を聞かせても…とことなんですかね…

 ただ、この本の価値と言うのは、ドラフト1位で華やかにプロ入りしたにも関わらず、当初思ったような成果を上げることができずに挫折を越えて、そこそこの成果を上げたというところにとどまらず、引退以降のセカンドキャリアについても取り上げられていることだと思います。

 イタリアンレストランのオーナーシェフをしている元横浜の水尾投手とか、IT企業に勤務している元ソフトバンクの江尻投手とかが紹介されているのですが、ただ元プロ野球と言うだけでなく、ドラフト1位と言う同世代のプロ野球選手としてはトップクラスの評価を受けた彼らが一時は挫折を味わい、それを超えてプロ野球選手であり続けたということが、その後の人生にも活きているということを啓蒙するということで、中高生に取っても意義深い本だといえるのでしょう。

 

僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版/瀧本哲史

 

僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版 (講談社文庫)

僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版 (講談社文庫)

 

 

 マッキンゼー勤務を経て、兄弟で教鞭をとられている方の著書だということですが、この本ってフルバージョンの方が2012年のビジネス書対象を受賞されたということですね。(って、そんな賞があったんだ…)

 最近モノが売れない…それは大量生産大量消費時代のコモディディ化した商品が売れないということなんですが…ということを聞くようになって久しいのですが、最早人材と言う“商品”も例外ではなく、労働市場グローバル化の洗礼を受ける中、人材も“コモディディ化”してしまっては、安く買い叩かれることになってしまったということで、そうならないための「武器」を身に付けてもらおう、というのがこの本の趣旨です。

 少なくとも現時点で、曲りなりにう「売れる」スキルとしてこの本の中で、

  1. 商品を運んで売ることができる人(トレーダー)
  2. 専門性を高め、高いスキルで仕事する人(エキス
   パート)
  3. 商品に付加価値を付け、市場ニーズに合わせ売る
   ことができる人(マーケター)
  4. 全く新しい仕組みを生み出せる人(イノベーター)
  5. 起業しリーダーとして行動する人(リーダー)
  6. 投資家として市場に参加する人(インベスター)

を挙げられています。

 結論から言うと、インベスターになろうというのがこの本のおススメなのですが、どうしても日本では投資家というのに、元々いいイメージが無くて、一時期のファンドの暗躍がそれに火を注いでしまった側面はあるのですが、当然社会的な意義は大きいということで、インベスターたることを啓蒙されます。

 ただ、多分この本は大学生や若いビジネスパーソンをターゲットにされていると思われるのですが、そういう人たちが、いきなり投資家になろうとしても、そんな元手を調達できる人は、そうはいないでしょう…というツッコミはあるのですが、そういうインベスター視点を以って仕事をすること自体が、かなり強力な「武器」になるということのようです。

 

50歳からの出直し大作戦/出口治明

 

50歳からの出直し大作戦 (講談社+α新書)
 

 

 出口さんによる、シニア層の起業のススメです。

 この本の構成としては、シニア層の起業が求められるという社会的な背景と、実際に起業されたシニア層の体験談を出口さん自身がインタビューを行い、それを元に改めて起業に向けたエールを送るというカタチで、そこそこの数が出ているシニア層向けの起業本としては、ありがちなモノなのです。(まあこれはおそらく編集者が求めたものなんでしょうけど…)

 なのに、ありがちなシニア向けの起業本と比べて、圧倒的に“深み”が違うんですよね…これはやっぱり出口さんの経験のなせる業なんでしょうか…

 自分の経験を活かすとか、好きなことを仕事にするというオーソドックスなモノなので、リタイア間近の方々が、その後の生活に希望を持てるというか、そういう本ですので、希望が見いだせない、該当する年代の方、是非ご一読のほどを!

 

もたない男/中崎タツヤ

 

もたない男 (新潮文庫)

もたない男 (新潮文庫)

 

 

 ワタクシが大学生だった頃、『じみへん』というシュールなマンガがあって、最初は「なんじゃこりゃ!?」という感じだったのですが、段々とハマって行ったのを覚えていますが、その作者がこの本の作者の中崎さんです。

 最近は、ミニマリストと言う、できる限り「持たない」ようにしようとするライフスタイルを志向する人が出現してきているようですが、中崎さんは、ある意味そのハシリだったのかも知れません。

 ただ、別にオシャレなライフスタイルがどうこういうワケではなく、ただ余計なモノを持っているのがストレスになるということのようで、それなのに物欲は旺盛で、何かと欲しくなって買っては見るモノの、ジャマになって捨ててしまうということです。

 まあ、ビミョーにコミカルなところもありますが、モノがないというのも楽しそうだな、と思させてくれます。

 

 

新・オタク経済/原田曜平

 

新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動 (朝日新書)

新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動 (朝日新書)

 

 

 「マイルドヤンキー」の原田さんがオタクを語ります。

 原田さんによると「マイルドヤンキー」じゃないですが、オタクも「マイルド」化してきており、オタクと聞いて多くの人が思い浮かべるような、映画『電車男』の主役のような「ガチオタ」は、最早絶滅危惧種に近いようです。

 かつてのオタクは同好の人に対しては社交性が乏しかった(今だったら、コミュ障って言うんですかね…)のに対し、最近のオタクは、オタクであることがコミュニケーションのネタに使えるとして、積極的にカミングアウトし、プライベートも充実してるということで、この本の中では、こういうタイプのオタクを「リア充オタク」と呼んでいます。

 ただ、かつてのオタクは購買意欲がハンパなかったのに対し、「リア充オタク」はあくまでもツールとしての位置づけなので、グッズなどに対する消費意欲は低く、オタク市場は縮小傾向にあるようです。

 ただ、市場がこういった「オタク」層のシフトに、現時点ではついていけていないだけで、そういうセグメントにアピールするための商品・サービスの提案もされています。

 個人的には、アニメやアイドルといったオタクは苦手なのですが、日本経済を牽引する起爆剤としてガンバってもらいたいと思う反面、アニメやオタクが日本を代表する文化だとされるのはなぁ…

 

本物の思考力/出口治明

 

本物の思考力 (小学館新書)

本物の思考力 (小学館新書)

 

 

 これまでの著書でも出口さんは、戦後日本経済を支えてきた、アメリカへのキャッチアップ型の成長モデルは最早機能しなくなっており、個々で思考力を身に付けて行かないと生き残っていけないということを再三おっしゃっていましたが、この本はその“思考力”を身に付けるための取組に特化した本です。

 これも既出の図書に書かれていましたが、モノを考える際には「数字・ファクト・ロジック」に基づいて考えるということなんですが、この本で強調されているのは「腹に落ちるまで考え抜く」クセをつけるということです。

 この本に書かれていることで一番印象的だったのは、そうやって思考力を研ぎ澄ましていって、十分なインプットをしていれば、直感的に行動しても、あまり外れたことにならなくなるということで、日本人にとって、間違うことよりもトライアル&エラーをしないことのリスクが大きいということを痛感させられる内容でした。