平成幸福論ノート/田中理恵子

 

平成幸福論ノート 変容する社会と「安定志向の罠」 (光文社新書)

平成幸福論ノート 変容する社会と「安定志向の罠」 (光文社新書)

 

 

 昨日紹介した『女子会2.0』にも参加されていた水無田気流さんが本名名義で書かれた本です。

 『女子会2.0』では座談会形式で、発言を取り上げられていたんで、カジュアルな印象だったのですが、この本は、社会学者の顔で語られているのか、かなり生硬な語り口です。
 
 高度経済成長期以降の「幸福」の変遷を語られているのですが、このブログでも再三著書を取り上げている出口治明さんが、欧米キャッチアップ型のビジネスモデルの崩壊を主張されていますが、そういう部分がビジネスの世界だけではなく、日本人のライフスタイルにも表れているんだな、ということを痛感させられます。

 さらには、ジェンダー論で最近よく語られる専業主婦幻想の崩壊についても取り上げられていますが、そういった中で、経済的な充足=「幸福」なのか、ということについて疑問を投げかけられます。

 戦後日本はそこに疑いをさしはさむことなく突っ走ってきた面があるのですが、段々とアメリカ的なライフスタイルが風化していくにつれ、そこに疑問を持つ人が増えてきており、そうでなければシアワセになれるんじゃないか、と思えるところが多々ありました。

 そういう側面って、もっとクローズアップされるべきなんじゃないか、とも思います。

 

女子会2.0/「ジレンマ+」編集部

 

女子会2.0

女子会2.0

 

 

 ジェンダー論の強者女子会になぜか古市さんが紛れ込んだ座談会+各論者によるショートエッセイで構成された本です。

 最後の方のエッセイにのみ「婚活」の白河さんが登場しますが、2013年に出版されたこの本の時点で、白河さん自身は「婚活」から「女子+仕事」に活動の重点をシフトされているということなんですが、結婚するにせよしないにせよ、女性が一生の仕事を持つということが、今後成人する女性にとっては必須のこととなっているということです。

 そういう時代背景を踏まえた「女子会」なワケですが、そういうシワ寄せって、概ね女性の方が被るモノであるようで、そういうことをも加味した上で、それでも結婚するのか?ということでもあるようです。

 そうなると恋愛をするにも男女ともお互い、先々まで見通した上で、それでも大丈夫!という確信がなければ踏み出せないところがあるようで、この本の中で紹介された数字に愕然としたのですが、アラフォー世代と言われる35~39歳世代の女性の25%、男性に至っては30%超が性交渉の経験がないということです。

 まさに転換期にあるんでしょうけど、結婚もし難いし、コドモも持ちがたいということで、「保健所落ちた、日本死ね!」じゃないですが、誰がこんな世の中を望んだんでしょうね…

 

勝ち続ける意志力/梅原大吾

 

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

 

 

 先日紹介したちきりんさんとの対談本で深遠な発言を再三繰り出していた、世界一のプロ格闘ゲーマーの梅原さんの半生記です。

 まあ、対談本での発言の「深さ」はちきりんさんに引き出された部分もあったようで、この本ではそこまでの「深さ」は発揮されていませんが、やはりある世界でトップを極めた人ならではの「哲学」を感じます。

 梅原さんが世界一になった頃、日本にはプロのゲーマーはいなくて、梅原さん自身、プロになるという発想はなく、いくら頂点を極めたと言っても、何一つ成し遂げたという感覚に苛まれ続けて、一時は完全にゲームから離れてしまったようです。

 復帰をしてから、依然と変わらぬ実力で勝ち続けたことから注目されて、プロになるよう誘われて、ようやく「ゲームをやってていいんだ」と感じられたということです。

 梅原さんのスゴイところは、一旦勝っても、平然とそのスタイルを捨てて、新たな取り組みをするところで、やっぱり同じ闘い方に固執する人は、一旦は勝ててても持続することは難しいようです。

 こういうストイックな人が居られると知ると、ゲームも捨てたもんじゃないなあ、と感じます。

 

合コンの社会学/北村文、阿部真大

 

合コンの社会学 (光文社新書)

合コンの社会学 (光文社新書)

 

 

 最近、常見さんが『ちょいブスの時代』で推薦図書として挙げられていた男女関係に関する本を大量に図書館から借りてきて読みつつあります。

 ワタクシが大学から社会人1、2年目の頃はバブル経済の末期で、合コンの黄金時代だったのですが、最近は随分と下火になっているようですね。

 この本は2007年に出版された本なのですが、「社会学」を銘打っていて、著者のお二方も社会学者を名乗っておられるのですが、合コンの役割分担や狙った女の子が被った時のサイン交換など、ワタクシが若き日にサブカル誌なんかで見られたような内容がマジメに紹介されていて、かなりウケました。(あとがきで、合コンを「社会学」として取り扱うことの逡巡を告白されていますが…)

 出会いを求めて合コンに向かうはずなのですが、そこで好みの人を見つけたからと言って、ミョーにガッツくと総スカンを食らったり、なかなか「お作法」が難しくて、意外と出会いを求める手段としては「使えない」傾向が強く、そういったメンドくささが合コンを下火にした側面があったことも否めないようです。

 ワタクシ自身、残念ながらほとんど合コンの経験が無かったんですが、こういうムダな努力が繰り広げられていたことを知るにつけ、行かなくてよかった…と胸を撫で下す次第でした。

 

職業としてのAV女優/中村淳彦

 

職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)

職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)

 

 

 ワタクシも若い頃にはいろいろとお世話になったAV女優さん方ですが、さすがにここ数十年はご無沙汰だったのですが、かなり状況が変化しているようです。

 というのも、当時と比べるとAVってかなりアンダーグラウンド感が軽減されているようで、AV女優の成り手のリクルーティングも、かつてであれば強引かつアヤシい勧誘が主力だったのに対し、最近はプロダクションがHP上で勧誘をすると応募が殺到するということで、隔世の感があります。

 とはいうものの、セックスを売り物にして、ハダカが公の空間に残り続けるということは間違いのないことのようで、必ずしも女性に取って有益な選択肢であるとは言い難いということで、安易な選択を戒められています。

 まあ、この歳になると別世界ではあるものの、ムスメを持つ父親としての顔もあるワタクシとしては、あんまりそういうところを安易におカネに換えるという選択肢は、可能な限り後ろに持って行った方がいいんじゃないか、とは思うのですが…

 

99%の会社はいらない/堀江貴文

 

 

 堀江さんの仕事論なんですが、そもそも何のために働くのか?と言う部分から問い直したら、こういう考え方もアリかなあ、と今回の本は考えさせられます。

 堀江さんの本って、そりゃフツーの人にはムリ!としか思えない内容が多かったのですが、そもそも何のために働くか?と根源論を言うと、シアワセになるため…ということだと思うのですが、多くの会社はそういう風には機能していないのは間違いのないところでしょう。

 じゃあ、どうやったら楽しく働けるのか、ということなのですが、まず、堀江さんは「会社で働いていたら、ムリ!」と身も蓋もないことをおっしゃいます。(まあ、否定しがたいところですが…)

 現時点で考えられるのは、堀江さん自身が主催されていることも一例なのですが、クラウドファンディングに応募される案件なんかも、その一例なのかもしれないのですが、これ何か楽しそう!と思えることに、オレも一枚咬ませて!みたいな形態が考えられるんじゃないかな、ということのようですが、そうなると旧来的な会社形態では、ほとんど対応できるところがなさそうです。

 ある程度の規模の事業は会社形態じゃないと対応できないんじゃないか、と多くの日本人は思っていたのですが、どうやらそうじゃない形態もあるんじゃないか、ということを意識させたということで、かなりこの本の持つ意義は大きいナじゃないか、と思います。

 

鋼のメンタル/百田尚樹

 

鋼のメンタル (新潮新書)

鋼のメンタル (新潮新書)

 

 

 数々の歯に衣着せぬ発言で「炎上」を引き起こしている百田さんがかたる「メンタルタフネス」論です。

 百田さん自身「大放言」で激しいバッシングを受けておられますが、この本の中でおっしゃるところによると、必ずしも平然とされてばかりではないということで、ヘコんでおられる時もあるようです。

 ただ、だからと言ってシュンとなって、ただただ反省というワケでは、モチロンなくて、言うべきことは言わなくては!ということのようです。

 子供の頃から、どの辺まで言ったら地雷を踏むのか、ということをトライアルアンドエラーで、肌感覚として試してこらえたという経験もあって、バッシングへの対応も筋金入りです。

 根底にあるのは、日本人は他人に対していい人と思われたいという志向が強すぎる、と指摘されています。

 ある程度、その部分を諦めると、かなり言いたいことをしっかりと言い切れるみたいです。

 引用されている橋下元大阪府知事のコメントが印象的だったのですが、木星から自分の発言を見たら、全然大ごとではない、ということをおっしゃっておられますが、多分百田さん自身もそう思ってらっしゃるんでしょうね…(笑)