20代・ハッピー☆パラサイトの消費のチカラ/牛窪恵

 

 

 白河桃子さんの『「キャリモテ」の時代』で参考図書として挙げられていたので、手に取ってみました。

 この本は2007年に出版された本で、エビちゃんこと『CanCam』のカリスマモデルとして、社会現象とも言える程の人気を誇った蛯原友里さんの全盛期に当たる時期で、エビちゃんファッションを真似るOL世代の旺盛な消費があったようです。

 その背景として「ハピパラ」ということで、比較的豊かな家庭の育ちで、自宅で生活をしているということで、元々可処分所得が高い上に、親からの支援もありということで、あたかもバブル期のようにブランドモノへの出費を惜しまないようです。

 「エビちゃんファッション」全盛期ということで、この頃は、まだまだ高収入のダンナをつかまえて、専業主婦になろうという志向も強いようです。

 また、男性側も含めて「つながる」ための消費と言うキーワードもあり、当時まだLINEは無かったのですが、mixiなどのSNSの黎明期で「つながる」ために、横並び的な消費も旺盛なようです。

 今からするとちょっと隔世の感がありますが、バブル期以降もこんなハデな時期があったんだ…と驚いた次第でした。

 

サッカー代理人 ジョルジュ・メンデス/ミゲル・クエスタ、ジョナタン・サンチェス

 

サッカー代理人 ジョルジュ・メンデス

サッカー代理人 ジョルジュ・メンデス

 

 

 4度バロンドールを獲得したクリスチアーノ・ロナウドやヨーロッパ3大リーグでのタイトルとチャンピオンズリーグで3回の優勝を誇る“スペシャル・ワン”ジョゼ・モウリーニョなど、現代の名だたるサッカー選手、監督の代理人を務め、世界ナンバー1の代理人と言われるジョルジュ・メンデスの評伝です。

 サッカー代理人なんていうと、魑魅魍魎のダマしダマされの世界というイメージがあるのですが、成功した代理人の中でも、ジョルジュ・メンデスは特に人格者として知られ、契約した選手からの信頼も厚く、クリスチアーノ・ロナウドを始めとした世界的な選手たちが父と慕うようです。

 また、選手の代理人と言うと、高く売りつけられるんじゃないかということで、クラブとは利害が対立することが多く、煙たがられる存在であることが多いの
ですが、ジョルジュ・メンデスはむしろ、クラブからも頼りにされる存在で、モウリーニョレアル・マドリードの監督をしている時は、あまりにクラブと親密な関係にあったことから、無用な邪推を招いたこともあったようです。

 まあ、評伝であんまり悪く書くこともありませんが、とにかく如何に手掛けた選手たちが活躍できるのか、ということにココロを砕かれており、どのクラブでプレーするのがいいのかということをしっかりと見極めた上で、移籍を進めるようにしているので、移籍後にクラブ内の政治的な駆け引きに巻き込まれることも少なく、プレーに集中できて成功する選手が多いようです。
 
 こういう風に目先の利益にとらわれず、選手の適性を見極め、戦略的にコトを進めることが代理人としても成功する確率が高いようです。

 

戦略的思考とは何か/岡崎久彦

 

戦略的思考とは何か (中公新書 (700))

戦略的思考とは何か (中公新書 (700))

 

 

 「今でしょ!?」の林センセイが『林修の仕事原論 (青春新書インテリジェンス)』の中で、生きていく上の方向性を見出すキッカケとなったとして取り上げられていた本ということで、手に取ってみました。

 てっきり、ビジネス上の戦略論だと思っていたのですが、大和朝廷の創成期からこの本が書かれた冷戦の末期に至るまでの日本の国家としての戦略論です。

 割と日本って島国で、直接隣国の影響を受けることが少なかったからかもしれませんが、周囲の状況に無頓着で、自分のチカラにのみ興味があるようなところがあったようです。
  
 そんな中で、唯一例外的に世界情勢に敏感だったのが明治維新から日露戦争に至るまでの時期だったようで、その時期に下手なことをすると国家の滅亡につながるということで、相当慎重に周囲の分析や、自身の位置づけをしていたようです。

 林センセイも他の本で、自身のポジショニングからやるべきことを検討していたということをおっしゃってましたが、そういう部分をこの本から学んだのかな、と感じます。

 それにしても、日本の外交ベタって、“おもてなし”なんていいながら、空気の読め無さだったなんて…

 

49歳からのお金/大垣尚司

 

49歳からのお金―住宅・保険をキャッシュに換える

49歳からのお金―住宅・保険をキャッシュに換える

 

 

 金融の専門家による「老後」に向けたおカネの面での備え方なんて言うと相当期待してしまいますが、久々にハズレを引いてしまいました。

 副題にもあるように「住宅・保険をキャッシュに換える」ということで、結構斬新な老後への備えを期待して読み進めたのですが…

 アメリカなんかだと保険を解約せずに第三者に買い取ってもらうような選択肢があるようですが、えへ、日本ではダメなんですよねぇ、って…

 日本にもこんな金融商品ができたらいいのにねって、ご丁寧にそういうプランまで…

 いやいや、そんな話イランから!

 それなりに不安を抱いて、ワラにもすがるようなキモチでこの本を手に取った人もいると思うんですよ…で、こんな本です…

 もしこの本自腹切ってたら、間違いなくクレーム入れてると思います。

 

 

夢、死ね!/中川淳一郎

 

 

 以前、『謝罪大国ニッポン (星海社新書)』を紹介した中川さんが「自己実現」のウソを語ります。

 この本は大きく分けて以下の3つのパートで構成されています。

 1. 「夢」に見切りをつけることの重要性
 2. 職場で起こるバカバカしさ
 3. それでも仕事をすることの素晴らしさ

 まず1つ目は、最近特に若い層において「夢」を追い続けることの重要性が強調されることが多いのですが、周囲から見ればどう考えてもムリだろ!?と思えることを、わずかな(っていうか、そもそもあり得ない)可能性にすがって、いつまでもモラトリアムに閉じこもる人が多いということで、見切りをつけることの重要性を語ります。

 2つ目は、ご自身の広告代理店勤務時の経験を元に語った内容で、カネを出す側って、無限に理不尽になれて、また日本の多くの会社員はそれに応えてしまう…それは、日本の会社員の多くの行動の動機が、如何に怒られないようにするか、ということに終始しているからだと指摘されます。

 最後のパートは、それでも如何にヒドい目に遭おうとも、共に闘う「同士」がいることの意義を語られます。

 読んでいる最中は、とっ散らかった本だなぁ…と感じましたが、「自分探し」に逃走するよりも目の前のことを着実にこなすことによる成長、という側面を見逃すべきじゃない、とおっしゃりたいのかな、ということを感じました。

 それにしても2つ目のパートの、ありがちでムカムカしながらも、あまりにもオモシロくて、一気に読み進めてしまいました!(笑)

 

中国人エリートは日本をめざす/中島恵

 

 

 中国人にディープに切り込んだ取材で、日本では誤解されがちな中国人の実像に迫ることで定評のある中島さんによる、中国人の「爆留学」に関する本です。

 実はワタクシ、会社で目の前の席に座っているのが日本に留学して、そのまま日本企業に就職した中国人だったりするのですが…

 中国人の間では、日本の大学の中でも圧倒的に東大と早稲田が支持されているということなのですが、留学するんならアメリカの大学を志向するもんだと思っていましたし、日本に来る位だったら、世界の大学ランキングで日本よりも上位に位置する北京大学や精華大学なんかを志望するんだと思ってました。

 ただ、アメリカの大学は日本と比べて必要となる費用がかなり高額なのと、あまりに競争が激しいこと、本国からの距離が遠いということで、避ける人が少なくないようです。

 またモチロン北京大学を志望する人も多くて、以前はそういう上位層からアブれた人が、日本への留学を志望するといった感じだったようですが、近年では東大や早稲田を第一志望とする人が少なくないようです。

 それには中国でのあまりに激しい受験戦争と、受かったとしても相当学究上の自由度が限られること、また日本の生活環境やサブカルを中心とした文化を志向して、といった理由があるようです。

 また日本の大学としても、出生率の低下による志望者の減少、志望者の質の低下などから、特に理系の大学院では優秀な中国人の志望者がなければやっていけないという事情もあるようで、ある意味中国人留学生とWin-Winの関係にあるということです。

 こういった「追い風」にふんぞり返らず、日本の大学も優秀な学生を引き付ける要素を、今のうちから中国人留学生のフィードバックを踏まえて備えないといけませんね。

 

 

電車をデザインする仕事/水戸岡鋭治

 

 

 九州新幹線「つばめ」や九州を走る日本初のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州:」など多くの斬新な鉄道の車両をデザインしたことで知られるデザイナー水戸岡さんの著書です。

 デザインって専門的に携わったことのある人でなければ、なんとなく「あ、キレイだな!?」とか「斬新だな!?」くらいの感想しか持てないと思うのですが、その中にはかなり多くの想いが込められていて、実は無意識に見ている我々も、なんとなくその意味を受け止めているようではありますが、そういう部分についてご自身がデザインされた車両などを通して語られます。

 近年は、ただ単に車両をデザインするだけではなくて、トータルデザインということで、サービス全般も視野にいれば「デザイン」をされていたということですが、そんな中で、サービスを受ける人が、どんなバックグラウンドのある人で、そういう人が見たらどう感じるんだろうということを、いろんな側面から検討するという、途方もない検討を経た上で「デザイン」が成り立っているということで、今後そういうデザインをなんとなく見ることができないですね!(笑)