ジャニーズと日本/矢野利裕

 

ジャニーズと日本 (講談社現代新書)

ジャニーズと日本 (講談社現代新書)

 

 

 2016年末のSMAPの解散と絡めて、立て続けにSMAP、ジャニーズ関連の新書が出版されたのにオドロいたのですが、割とマジメな内容っぽかったので、興味を惹かれて立て続けに紹介しようかと思います。

 ジャニーズっていうとイケメンの男のコたちを集めて歌を歌わせたり、芝居をさせたりということで、顔さえ良ければ…みたいに思う人もいるかと思いますが、実はSMAPのレコーディングにはジャズ/フュージョン界のトッププレイヤーが参加していたり、嵐の曲はかなりマニアックなブラックミュージックが下敷きになっていたりと、本格的なエンターテイメントを志向しているようです。

 元々ジャニーズ創始者ジャニー喜多川さんは、戦前アメリカにいて、アメリカのエンターテイメントを日本にも紹介したいということでジャニーズ事務所を始めたということなのですが、その後もミュージカル、ジャズ、ロック、ディスコ、ヒップホップと、その時々のアメリカでの最先端のエンターテイメントを日本に紹介してきたという側面があるようです。

 中にはシブガキ隊や関ジャニ∞のようなコミックの要素があるグループもありますが、これは“アメリカから見た日本”ということで、ジャニーズのエンタテイメントには徹頭徹尾アメリカの彩られているということで、今後、そういう視点で見てみたいな、と思わせる本です。

 

 

ルポ中年童貞/中村淳彦

 

ルポ 中年童貞 (幻冬舎新書)

ルポ 中年童貞 (幻冬舎新書)

 

 

 先日、2003年に出版された「童貞論」を紹介しましたが、2015年に出版された「童貞論」を発見したので手に取ってみました。

 この本、以前『職業としてのAV女優 (幻冬舎新書)』を紹介した中村さんが書かれた本なのですが、アンダーグラウンドな世界のルポを得意とする中村さんの取材力が光ります。

 中年童貞というのは、30歳以上で女性と性行為の経験の無い人ということで、そういう人へのインタビューから成り立っているのですが、

 ・オタク
 ・ネット右翼
 ・女性に絶望した人

等々のバックグラウンドを持つ方ごとにカテゴライズして紹介されているのですが、共通しているのが、コミュニケーション脳力に問題があり、孤立した結果、かなり独善的な考え方を持つようになってしまっているというところがあります。

 サンプルが少ないので一般論として語ろうとしているところにムリヤリ感は否めないものの、ある程度の“真実”があるように思えます。

 いろんな意味で、読んでいて久々に“寒気”を覚えるような気がした本でした。

 

不道徳教育講座/三島由紀夫

 

不道徳教育講座 (角川文庫)

不道徳教育講座 (角川文庫)

 

 

 かの文豪・三島由紀夫が語る、今風に言えば“ちょい悪”のススメです。

 この本は『週刊明星』という雑誌に三島さんが執筆されていて連載をまとめられたものだということなのですが、各パートのタイトルが「知らない男とでも酒場へ行くべし」とか「教師を内心バカにすべし」とか、この本が出版された昭和42年の頃であれば“良心的な”オトナであれば卒倒しそうな「不道徳」なと言うか、道徳的なモノの真逆を行った内容です。

 でも、ワタクシが若い頃も、開高健さんや北方健三さんといった“ちょい悪”の作家がちょっと粋がった生き方を語る連載がありましたが、そういうちょっと悪ぶるのって、いつの時代もカッコいいのかな、と…

 

失敗を生かす仕事術/畑村洋太郎

 

失敗を生かす仕事術 (講談社現代新書)

失敗を生かす仕事術 (講談社現代新書)

 

 

 元々機械設計をされていて、その中で大事故を起こさないために日々の「失敗」を記録し続け、分析を重ねていった結果、「失敗学の開祖」ともいえる存在となった方の著書です。

 畑村さんによると失敗に備えるに当たって最も重要なことは、どんなに精緻な対策をしたとしても失敗は起こるものなんだという意識を持つということです。

 その認識を持った上で、日々の仕事を様々な観点で注視しつつ、できるだけ小さな芽のうちに大事故につながるような原因を摘み取るようにすることが重要なようです。

 そういった取組は個人の努力でできるモノではなくて、組織的に取組む必要があり、突き詰めれば組織の中で、最終的にはトップがコミットしないと有効な手立ては立てられないということです。

 失敗が起こった際でも、その失敗に寛容であることが重要だと指摘されていて、それが何故かというと、失敗するごとにいちいち責められる体質があると、どうしても失敗を隠蔽する誘引が働くということで、それを防ぐためにも失敗をオープンにしやすい状況を作ることが重要なようです。

 人間の弱いところに根差すものがあるので、難しい部分は多いと思うのですが、こういう意識って、かなり仕事をする上で役に立ちそうです。

 

 

下流社会 第2章/三浦展

 

下流社会 第2章  なぜ男は女に“負けた

下流社会 第2章 なぜ男は女に“負けた"のか (光文社新書)

 

 

 昨日紹介した『下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)』の第2弾です。

 前著の2年後である2007年の出版された本なのですが、「その後」を追うというよりも、深堀をするという趣旨なのですが、内容が被っているところが多くて、ちょっとビミョーです。

 主に「下流」の嗜好を追うカタチで深堀をしているのですが、男性の「下流」が内向きで暗い雰囲気なのに対し、女性は開き直っているのか、下流でも結構明るい雰囲気が漂うのは、やっぱり女性の「強さ」なんでしょうか…

 

下流社会/三浦展

 

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

 

 

 「自分探し」関連だったり「婚活」関連だったりの本に参考図書として挙げられているのを何度を見たので、手に取ってみました。

 この本は2005年なのですが、いわゆる「失われた20年」の真っ只中だったということで、かなりヒットしたようです。

 かつて「一億総中流社会」といわれていたのですが、その頃は全体の6割の人が自分を「中流」だと思っていたということですが、段々とその意識が「下」に向いて行っているということです。

 不況の影響もあるのですが、かつての終身雇用制が崩壊し、さらには雇用の非正規化が進んでいることもあるようです。

 この本では、その時点の「下流」意識よりも、今後の生活水準が向上すると思うか?という問いに対する回答が問題になっていて、「下流」の大半が悲観的な回答をしているところが問題だと指摘されています。

 さらに「下流」のモノの考え方や嗜好についても触れられているのですが、実は「自分探し」に強い関心を示す人は下層に位置づけられる人に多いということで、卵が先か鶏が先かという話もあるのですが、「自分探し」はあんまりシアワセにつながる確率が高くないようです。

 

少子社会日本/山田昌弘

 

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

 

 

 「婚活」と言うコトバをメディアで使い始めた山田先生の「婚活」以前の本です。

 2007年出版の本なんですが、その15年前位から少子化の傾向が高まっていたのですが、有効な手立てが打たれぬまま、かなり深刻な状況になったワケですが、その後10年近く経った現在においても、相変わらず有効な手立ては打たれていません。

 少子化が進展した理由って、まあ複合的なモノがあるんでしょうけど、一番大きな理由としては晩婚さらに最近は生涯結婚しない人が出てくるなど、婚姻率の著しい低下を指摘されています。

 ある程度経済が発展すると、それにつれて婚姻率が低下するのは、大きな趨勢としては仕方がない部分もあるようです。

 というのも、実家がそれなりに裕福になって経済的な不安がなければ、結婚することにより生活レベルが低下してしまう可能性が高く、結婚への誘因が下がるからです。

 それに加えて、非正規社員の増加で結婚できるだけの経済力を持った人が減ってしまい、さらに婚姻率が下がることとなってしまったようです。

 ということで、結婚する世代に対して、何らかのサポートが必要なのですが、あまりコンセンサスができていないようで、このままじゃジリ貧ですよね…