新・所得倍増論/デービッド・アトキンソン

 

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論

 

 

 『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』で一躍注目を浴びたアトキンソンさんですが、2匹目のドジョウを狙ったっぽいタイトルはともかくとして、如何にして日本を「再生」させるかという本です。

 “提言”と言いつつ9割方はこれまでの日本のダメダメなところの指摘で、いちいちイタい指摘です。

 戦後、奇跡の復興を果たした日本経済ですが、その原因として日本人の勤勉さやものづくりなんかが挙げられますが、実は主要因は、先進国としては異例ともいえる人口増加によって経済規模が拡大したことによるものだと指摘されています。

 それを自分たちの能力の高さだとカン違いした日本人は、その後カイゼンの努力を怠り、人口増加の鈍化とともに経済成長も鈍化したということで、「失われた20年」は決して単なる不運ではないということです。

 でも、長らく日本を見ているアトキンソンさんからすると日本の潜在能力はこんなもんじゃないということで、様々な提言をされます。

 そもそもGDPと言うのは“人口×生産性”で導き出されるモノであり、出生率の向上が見込めない中、生産性を上げて行くことに注力すべきで、そのために、

 ・企業や役所における“先例”主義を改め効率を上げる
 ・女性の能力を十全に活用する
 ・国を挙げた取組で企業にプレッシャーをかける

ということを推奨されています。

 現に観光業においては、国を挙げての外国人観光客の誘致が実を結びつつあり、同様の取組が生産性向上に向けてなされれば、成果が見込めるはずだとおっしゃいます。

 あと、実は人口増加のために、移民の受け入れという手もあるのですが、それをダイナミズムの源泉として経済成長を続けてきたアメリカが、それを“放棄”しようとしているのは注目に値するところかも知れません。

 

古市くん、社会学を学び直しなさい‼/古市憲寿

 

古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)

古市くん、社会学を学び直しなさい!! (光文社新書)

 

 

 新進気鋭の社会学者としてメディアの露出も多い古市さんなのですが、実は博士号もなく、社会学者を名乗ることに非難する向きもなくはないということだそうです。

 だからというワケではないんでしょうけど、日本の主要な社会学者12人に「社会学とは?」と問いかけることをキッカケにした対談をされます。

 社会学と言うのは、門外漢だけではなく、それを職業にする人に取っても実態が捉えにくいモノのようで、古市さんの問う社会学の定義について、意外なほどその内容がバラけています。

 というのも、社会学の扱う範囲の広範性というのもあるワケですが、それだけに他の学問だったらあるはずの汎用的な理論と言うのが存在しにくいようで、よりそれが曖昧な印象が強くしているようにも思えます。

 でも、それだけにダイナミズムがあるともいえるワケで、あとがき古市さんが触れられているように、社会学の魅力が伝えられればとおっしゃっている目的は十二分に果たしているんじゃないかと、ワタクシ個人としては感じました。

 社会学って、メチャメチャ面白いかも!?

 

上司の頭は丸見え。/川崎貴子

 

上司の頭はまる見え。

上司の頭はまる見え。

 

 

 よく意図の分からないタイトルなのですが、人材派遣を手掛ける会社を経営されている方が、職場における女性を活用することの重要性を説いた本です。

 昨今はある程度女性も職場で重要な任務を果たすようになっては来ているようですが、それでもまだまだ質量ともに充分とは言えず、それってかなり損をしていますよ、ということです。

 というのも、どうしても男性は仕事を“論理”で進めてしまいますが、それだけでは取りこぼしてしまう部分が多いんじゃないかとということです。

 女性を顧客とする企業ならモチロンのことですが、そうではない場合でも、仕事を“感性”で捉える女性の視点でも仕事を見つめなおすことが非常に重要なようです。

 ただ女性は、そういう“感性”の部分を男性が理解できるコトバで説明するのはニガテなことが多いようなのですが、それを焦れずに引き出して活用することがビジネスチャンスにつながることが多いんじゃないかと指摘されています。

 そういう風にウマく女性を活用するためにハード面・ソフト面での整備を進めている会社の業績の伸びが期待できるようで、これは活かさない手はないですよね!?

 

サポーター新世紀/宇都宮徹壱

 

サポーター新世紀―ナショナリズムと帰属意識

サポーター新世紀―ナショナリズムと帰属意識

 

 

 この本は、2002年の日韓W杯で如何に海外から観戦に訪れるサポーターたちを迎えるのか、というテーマをもって、1998年のフランスW杯を、サポーター観点から追った本だということです。

 このときはまだフーリガンの余波もあって暴動とまでは行かなくても暴れるサポーターもあったのですが、フランス代表が優勝して盛り上がったこともあって、サポーターを迎える姿勢も、シニカルなフランス人のイメージからすると、かなりウェットな対応があったようで、著者である宇都宮さんの印象もかなりポジティブだったようです。

 ただ日韓W杯が、韓国側はともかくとして日本側はどうだったのかというと、結構クールな印象を持たれたのではないかと危惧しますが、「お・も・て・な・し」を掲げた東京五輪がこの反省を踏まえて、暖かなモノになればいいな、と思います。

 

結婚の条件/小倉千加子

 

結婚の条件 (朝日文庫 お 26-3)

結婚の条件 (朝日文庫 お 26-3)

 

 

 大学でジェンダー論を教えられている方による「結婚」論です。

 この本は2003年の出版で、ギリギリ専業主婦幻想が生き残っていた頃のようで、センセイの教え子の女子大生たちは専業主婦をさせてくれるダンナ様への志向が強く、恋愛と結婚の線引きがかなり強かったようです。

 さらには、一応念願がかなった専業主婦のエピソードで、ダンナがリストラに遭って、こんなはずじゃなかったのパート労働を強いられていたり、ダンナが家事をしない等々…こんなはずじゃなかったのオンパレードです。

 さらにはかなり高齢まで結婚できなかった人の悲劇など、どうすりゃシアワセになれるんだ!?と叫びたくなる本だったりします…

 

ずるい勉強法/佐藤大和

 

ずるい勉強法―――エリートを出し抜くたった1つの方法

ずるい勉強法―――エリートを出し抜くたった1つの方法

 

 

 先日『ずるい暗記術―――偏差値30から司法試験に一発合格できた勉強法』という偏差値30代の劣等生が司法試験にパスし、弁護士になるまでになった方の手法を紹介
した本を取り上げたのですが、この本はその続編という位置づけなんでしょうか…でも、ちょっと焼き直しただけかと思いきや、結構ウレシイ誤算がありました!

 というのも“勉強法”と言っても『暗記術』の方のように試験対策だけを取り上げているのではなく、自己啓発本の実践みたいなことも取り上げられています。

 要は“マネ”をしようとするのですが、実際にはなかなか難しいところがあるのですが、この本では特に印象に残ったところをフセンに書いておいて、できるところから実践仕様と言うモノで、これだったらできるんじゃないかという気がします。

 最後の方が単なる自己啓発のススメになっているのはご愛敬ですが、社会人の方は『暗記術』よりこちらの方が“使える”かも知れません。

 

会社人間が会社をつぶす/パク・ジョアン・スックチャ

 

会社人間が会社をつぶす―ワーク・ライフ・バランスの提案 (朝日選書)

会社人間が会社をつぶす―ワーク・ライフ・バランスの提案 (朝日選書)

 

 

 冒頭に、

ワークライフバランス」この言葉を知っている人はほとんどいないと思う。

とあったのでビックリして確認すると、この本は2002年の出版で、日本、韓国、アメリカでの勤務経験がある韓国籍の女性が、当時アメリカで先進的だった「ワークライフバランス」をいち早く日本に紹介した本だということです。

 実はアメリカでも1990年代初頭までは女性の社会進出が過大だったようで、専業主婦もそれなりに存在していたようですが、昨今の日本と同様に専業主婦を養えるだけの収入がある男性が減少し、女性も働きに出る必要が出てきた中で「ワークライフバランス」の概念が次第に広まっていき、日本でも20年遅れで広まってきたようです。

 フレックスやテレワークなど、今や日本でも馴染みのあるコトバがちりばめられていますが、未だに制度の整備だけが進んでいて、実質的な浸透はまだまだだなぁと思うのですが、如何でしょう?