生産性/伊賀泰代

 

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

生産性―――マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの

 

 

 以前『採用基準』を紹介した、元マッキンゼーの教育担当マネージャーであり、ちきりんさんの正体かも?と取り沙汰されている伊賀さんの著書です。

 この本が出版された頃、この本とちきりんさんの『自分の時間を取り戻そう』を並べて、コーナーで平積みしていたのですが、これっていいの?と思ったのですが、似通ったテーマを切り口を変えて同時に出版するってスゲーな!!と感心した次第でした…(あくまでも、同一人物説を信じたとして、ですが、最近、ちきりんさんのブログでも、この2冊を並べて紹介してたりするので、もう開き直っているのかも知れませんね!?)

 ここのところアトキンソンさんの本や村上さんの本など、立て続けに日本人の労働生産性の低さを論じた本を紹介していますが、この本は伊賀さんのマッキンゼーでの勤務経験から見た欧米の企業と日本の起業の取組の違い、ひいては結果としての生産性の差を指摘されます。

 押しなべて日本企業ではアウトプットを増やす必要のある時にインプットの増加(残業、人員の追加等)で対応しようとする傾向が強いワケですが、ワークライフバランス重視のトレンドや人口減といった事情で、そういうことを続けられなくなっているということのようです。

 ということで、仕事のやり方を見直して生産性を上げないと日本の将来は無いということで、まずは生産性を上げるために、管理職等のリーダーシップが不可欠であることを指摘されています。

 その上で、有能な人たちの能力を十全に活用するための方策、「働かないオヤジ」みたいな人材を眠らせないとか、現場で即効性のあるロールプレイ型の研修の導入などの施策を具体的に紹介されます。


 「生産性を上げよう!」なんていうと、ギスギスしたモノを想像する人も多いと思いますが、そこで余裕を作って…というイメージを訴求すれば、こういう施策も浸透するんじゃないかと思いますが…

 

非モテの品格/杉田俊介

 

 

 こんなタイトル何で、恋愛関係のカルい読み物かと思って手に取ったら、やたらとヘビーな内容なんで、読み通すのに苦労しました。

 男性が抱く「自己嫌悪」が主なテーマなんですが、冒頭で旧来男性に求められてきた“強さ”を持てない男性が増えて来ているワケですが、そういう自分の弱さを認められなない<弱さ>っていうのが指摘されているのですが、なんかスゴいわかるなぁ…と感じます。

 その他、いろんな自己嫌悪が取り上げられるのですが、多くの男性が持つ、かなりツマないプライドが、傍から見たらそこを譲ったらラクになるんだけどなぁ…というところを譲れない…メンドくさい生きモノですね、男って…(笑)

 

資本主義の極意/佐藤優

 

資本主義の極意 明治維新から世界恐慌へ (NHK出版新書)
 

 

 「知の怪人」佐藤さんが『資本論』に沿って“資本主義”を語ります。

 『資本論』なんて、共産主義が過去の遺物となった現代では、すっかり忘れ去られたモノかと思っていたら、最近『資本論』をテーマにした本がやたらと出版されててオドロいていたのですが…

 ただ“過去の遺物”となっているのは『資本論』の中でもイデオロギーに関する部分のみで、資本主義を分析した「マルクス経済学」の部分については、今なお有効な分析があるようで、「マルクス経済学」研究の第一人者である宇野弘蔵さんの研究をと通して、明治維新から現代に至るまでの日本における資本主義の経緯をめぐります。

 西欧での資本主義とは異なるニュアンスもあるようですが、概ね『資本論』が見通す資本主義経済の内容に沿ったモノであることが紹介されていて、今なお、今後の見通しを占う上での手掛かりとなるようで、資本主義の行き詰まりが顕著な今だからこそ、これだけもてはやされていたんですね!?

 

消費税アップを逆手にとる販促テクニック/竹内謙礼

 

消費税アップを逆手にとる販促テクニック (双葉新書)

消費税アップを逆手にとる販促テクニック (双葉新書)

 

 

 2015年4月に消費税がっぷするのに合わせて出版された本で、駆け込み需要への対応や、アップ後の消費の冷え込みへの対処など、消費税アップと言う逆風に立ち向かうための本です。

 割と竹内さんって、トリッキーと言うか、意外な販促の手法を紹介されることが多いって印象があるのですが、この本では消費税アップに関連して起こりうる現象をできるだけモレなく丁寧に拾って、それぞれについて対処法を紹介しようという、かなり堅実な内容になっています。

 ただ、それだけに紹介されている施策の有効性が高いんだろうな、と言う気がします。

 2019年には保留されていた10%へのアップが予定されていますが、改めてこの本でやるべきことをおさらいしておいた方がいいかも知れませんね!?

 

痛くならない!速く走れる!ランニング3軸理論/鈴木清和

 

痛くならない! 速く走れる! ランニング3軸理論 (Ikeda sports library)

痛くならない! 速く走れる! ランニング3軸理論 (Ikeda sports library)

 

 

 以前、『初フル挑戦! サブスリー挑戦! マラソンは「骨格」で走りなさい (SB新書)』を紹介した市民ランナーを始動する鈴木さんの著書なのですが、前著で提唱した、骨格に合った3つの走り方を詳しく紹介したモノです。

 ワタクシもフルマラソンへの参戦を始めて6年近くが過ぎてあちこち故障しましたが、自分のカラダの特徴にあった“軸”を使って走ることで、自然なカラダの動きを思い
出すことができて、カラダがスムーズに動かせるようになるということで、故障が起こりにくくなるだけでなく、スピードの向上も期待できるということで、とりあえず当面は、この本に書いてあることを忠実に試してみたい気がしています。

 あー、この本は買っといてよかったかも…

 

「カネ」はなくとも子は育つ/森永卓郎

 

 

 エコノミスト森永さんの著作が一番盛んだった2000年代前半の著書で、その後の年収低下への対策と言った側面は、まだまだ前面には出てきていませんが、森永さんの思想の底流を流れるアメリカ的な効率主義への頑強な反発はいかんなく発揮されています。

 当時は「ゆとり教育」の弊害が顕著になってきていた頃で、小泉政権の政策の結果、総中流が終焉し、「格差」が顕著になり始めた時期でもあります。

 ということで、自分の子供には何とか「下流」に落ちて欲しくないということで、「ゆとり」の公立学校を避けて私立学校での教育を受けさせようとする人が急増したのが、この本が書かれた時期だったのですが、とてつもない負担があるにも関わらず、その成果が得られる確率ってどうなんだ?というのがこの本の主題なワケですが、もし相当低い確率をくぐり抜けて「成果」を享受したからと言って、シアワセになれるのか?ということを問われます。

 この辺が、のちの森永さんの「貧乏でも幸せ」的なテーマが出始めているのですが、多くの日本人が、当時は間違いなく盲信していて、未だに信奉者の多いアメリカ的なシアワセに正面から疑問を差し挟んだ、当時としてはかなり斬新な本だったんじゃないかと思います。

 おっしゃることにいちいち同意なんですけど、それを自分のムスメたちに反映させようとは思わないジブンってどうなんだろう…と言う疑問が改めて浮かんできて、かなり戸惑ってしまいましたが…

 

ハーバード白熱日本史教室/北川智子

 

ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書)

ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書)

 

 

 ハーバード大学で日本史を教えている、美貌の若手日本人研究者の方の著書です。

 そもそもハーバードで日本史の講座があることがオドロキですし、北川センセイの講座は履修が殺到しているということで、さらにオドロキです。

 元々、北川センセイ自身が日本史の講座を履修した時は、履修登録者が1ケタだったということですが、数学の研究者だった北川センセイがひょんなことから日本史を教えることになり、その斬新な切り口から次第に人気を博して行った様子を紹介されます。

 講座における人気のテーマである“Lady Samurai”や“Kyoto”の内容も紹介しているのですが、アメリカでの日本史教育と言うのが新鮮だということもあるのですが、これまでの歴史教育で抜け落ちている、女性の関わりや、市井の人々の歴史への関わりというのを如何に掬いあげるかということが、単純にオモシロいと思ったのと、今後の歴史研究に、実は大きな影響を及ぼすことになるんじゃないか?ということもあり、非常に興味深く、イッキに読み通せてしまいました。