パリピ経済/原田曜平

 

パリピ経済 パーティーピープルが市場を動かす (新潮新書)

パリピ経済 パーティーピープルが市場を動かす (新潮新書)

 

 

 『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』を始めとして、消費行動のトレンド
に関する本でヒットを連発されている原田さんの著書です。

 この「パリピ」というのは、パーティー・ピープルを英語の発音に忠実に言うと、パーリィ・ピーポーと聞こえることから、パーティなどの仲間と集まって楽しむことを志向する若い人たちを指したコトバなんだそうです。

 その人たちが注目されるようになったのが、ハロウィンの仮装をトレンドになるキッカケとなったのが彼らだということで、それに限らず、次々とトレンドを創っていっているからだということです。

 割と富裕層の属する人たちが多く、しかも楽しむためへの出費を惜しまないということで、彼らが起こすトレンドが喚起する旺盛な消費行動に期待する向きも多く、分析の対象とされたようです。

 特に「パリピ」の中でも、トレンドを生み出す立場にある人たちは、海外との結びつきが強い人が多く、海外特にアメリカでの最先端のトレンドを持ち込んで仲間と楽しみ、それをSNS等に上げたのを見た人が、それに憧れるということで、徐々に大きなトレンドとなって行くようです。

 そういうトレンドに敏感な人たちの間でのマウンティング的なモノもあって、そこはイケ好かない部分もあるのですが、ハッピーになるためにおカネを遣って、景気が好転していくと、言うことないですよね!?

 

コントに捧げた内村光良の怒り/戸部田誠

 

 

 内村さんだけでなく、出川哲郎さん、タモリさん、笑福亭鶴瓶らのお笑いの方を中心として、ももクロ、果ては元SMAPの中居さんなどを取り上げたインサイドストーリーが語られます。

 内村さんのパートでは、内村さんのコントに懸ける執念ともいえる情熱を紹介されているのですが、ブレイクのキッカケとなったダウンタウンとの『夢で逢えたら』での斬新なコントを思い出して、あの頃からスゴかったんだなぁ…と思い出しつつ、最近のモノに至るまで、そこまで練りに練ったモノだったと知って驚きました。

 お笑いって、芸術的なモノと比べて一段低く見られる向きも無くはないのですが、人を笑わせるための苦闘というのは壮絶なモノなんだなと思わされます。

 雑誌のコラムを集めたモノなので、文章が短めなのですが、もっと長い文章でも読んでみたいと思いました。

 

大人のコミュニケーション術/辛酸なめ子

 

 

 自称「コミュ力偏差値42」のなめ子さんが語るコミュニケーション術です。

 この方、一応コミュニケーションはあまり得意でないことを匂わせますが、引きこもってしまうワケではなく、それなりにコミュニケーションが必要とされる場に出向いておられて、それどころか高い「コミュ力」が必要とされるであろうセレブの集まりにも参加されています。

 そのうえで内心色々と粗相があったんではないかとか、イマイチ噛み合わなかったとかおっしゃっているのですが、この本を読んでいると、繊細であるが故に色々と気を回し過ぎているんじゃないか?という気がします。

 モチロン、コミュニケーションにおいてそれなりの気遣いは重要なんでしょうけど、オトナにとって、コミュニケーションにおける、ある意味での「無神経さ」も重要なんじゃないかという気がしました。

 

「最高のチーム」の作り方/栗山英樹

 

「最高のチーム」の作り方

「最高のチーム」の作り方

 

 

 北海道日本ハムファイターズの栗山監督が2016シーズンの日本シリーズ制覇後に書かれた本です。

 2016シーズンは、ソフトバンクが圧倒的な戦力を誇っていて、序盤で11.5ゲーム差をつけて、最短優勝の可能性もささやかれていたのですが、日ハムが驚異の逆転優勝を遂げた過程のインサイドストーリーを語られます。

 大谷翔平の「二刀流」に代表されるように、栗山監督は“セオリー”に捉われない戦術を展開されるイメージがありますが、外側から見てトリッキーに見えることであっても、自分たちの戦力を、ホンの少しの変化も漏らさず見極めた上で、固定概念に捉われずに、躊躇なくその時にベストの手を打とうとするというところに、栗山監督の「覚悟」を感じます。

 個々の選手の能力値の総和は、おそらくソフトバンクの方が大きかったと思いますが、その能力を活かしたという意味では、圧倒的に日ハムの勝ちだったということなんでしょうね。

 

軽自動車に乗る人妻はなぜ不倫に走るのか?/溜池ゴロー

 

 

 

 人妻モノのAVを世に広めたことで知られる溜池ゴロー監督による“人妻礼賛”の本です。

 このビミョーに“社会学”っぽいタイトルで語られるのはホンの数十ページで、その後は“人妻”の魅力とアプローチの仕方を語るという、アサヒ芸能みたいな週刊誌の新書版といった感じの恐るべき本です。

 その“社会学”っぽい部分なんですが、そんなに「フィールドワーク」をしたワケではないんでしょうけど、近年、SNSの普及によって“不倫”へのハードルが著しく低くなったと言われますが、それに加えて、郊外のファミレスと軽自動車が「3種の神器」なんだそうです。(詳しく知りたい方は、この本を手に取ってみてください…(笑))

 で、人妻の“飢え”についても触れられているのですが、「釣った魚にエサやらない」日本人男性と結婚して、他の男性から見ればまだまだ魅力的なのに、ダンナからオンナ扱いしてもらえない…そういうところも“背景”としてあるんでしょうね…

 

 

しなやかな日本列島の作り方/藻谷浩介

 

藻谷浩介対話集 しなやかな日本列島のつくりかた

藻谷浩介対話集 しなやかな日本列島のつくりかた

 

 

 先日藻谷さんの『観光立国の正体 』を紹介しましたが、この本で山田さんと対談したのがきっかけだということだったので、手に取ってみました。

 この本では危機に瀕している

  ・商店街
  ・限界集落
  ・観光地
  ・農業
  ・医療
  ・赤字鉄道
  ・ニュータウン

といったテーマごとに、地道に有益な活動をされているエキスパートの方々と対談されています。

 モチロンそれぞれの分野において、公的になんらかの対策が講じられてはいるのですが、通り一遍のおざなりな施策が却って“空洞化”を助長していたりと、マイナスの影響を及ぼしている場合が多いということです。

 そういうことについて、画一的におカネをつぎ込んだら、それでいいんでしょ、ということではなくて、ちゃんと実情を見極めた上で施策を講じるべきなのに、“効率主義”的な対応で、結局は効果が出ずにおカネをドブに捨てることになるのはどうなんでしょうか…

 せめてこういう人たちに話を聞いてからやったらいいのにねぇ…

 

国が亡びるということ/佐藤優×竹中平蔵

 

国が亡びるということ

国が亡びるということ

 

 

 以前、2016年に出版されたお二方の対談本を紹介しましたが、これが第一弾のようです。

 佐藤さんって、割と対談本が多いのですが、大体の場合、対談した側が受けに回ることが多くて、2016年のお二方の対談本もそんな色彩が強いのですが、この本は日本を代表する知性であるお二方が、当時民主党政権であった日本の問題点をえぐります。

 世評では有能とされる日本の官僚ですが、世界的に見ると学部卒で幹部となるなんてありえないということで、かなりハンディがあるということとか、イマイチ政治家に世界観が欠けているところとか、日本のダメなところを指摘するのは想定内なのですが、実は日本の影響力と言うのがダメダメな政治家がロクに考えずに下した判断が意外な程だったりと、日本のチカラのあるところも示されます。

 とにかく、まだ売り出し中と言うか、そこまで著述者としてのステータスを確立していなかった、最近よりも結構ギラギラした「知の怪人」を相手に、対抗するというワケではないのですが、自分の武器でがっぷり四つに組み合った議論は圧倒的な迫力です。

 いやあ、レベルの高い本の多い佐藤さんの著書の中でも格別な1冊でした。