職業としての地下アイドル/姫乃たま

 

職業としての地下アイドル (朝日新書)

職業としての地下アイドル (朝日新書)

 

 

 実際に地下アイドルとして活動しなたらライターとしての顔持つ方が書かれた“地下アイドルの実態”です。

 “地下”なんて言うもんだから、やっぱりちょっとアヤシげなニオイを感じていたのですが、元々テレビ等で活動するメジャーなアイドルと比較して、蔑称的に使われ始めた呼び名だったのが、AKB48の出現をキッカケにファンと触れ合えるアイドルという側面がクローズアップされて、むしろアイドル自身とファンの双方が積極的に“地下に潜る”傾向も見られて現在に至っているようです。

 狂信的なファンがライブ活動をしていた女性を刺傷した事件があったことから、こういう地下アイドルを追いかけるファンを危険視する傾向もありますが、寧ろほとんどのファンがかなり(ワタクシなどから見ると不自然に)紳士的なようです。

 まあ、現役の地下アイドルが書かれた本だということで、自分達やファンを悪し様には言えないという側面もありつつ、思ったよりずっとポジティブな存在みたいです。

 本筋からは離れるのですが、この姫乃さんの本の構成力や取材力は、これまでこのブログでも社会学関連の本を取り上げましたが、アンケートでの質問における設問設定など、本格的な社会学的手法が垣間見られて、その才女ぶりに驚かされました。

 

カルビーお客様相談室 クレーム客をファンに変える仕組み/カルビーお客様相談室

 

カルビーお客様相談室 クレーム客をファンに変える仕組み

カルビーお客様相談室 クレーム客をファンに変える仕組み

 

 

 “お客様相談室”っていうとクレーム電話の嵐で、メンタルをやってしまって…みたいなネガティブなイメージがありますが、カルビーではそこを戦略的にブランドイメージ形成のフロントとしての役割を担うような仕組みを取り入れられたということです。

 ということで、カルビーでは“クレーム”を“処理”するというのではなくて、“ご指摘”に“対応”するということで、ネガティブな内容だけではなくて、こんな商品が欲しいといった要望まで取り扱っているということです。

 不具合の対応についても、できる限りお客さんの視点に立とうということで、マニュアルに基づく対応をするのではなく、ちゃんとお客さんの状況を見て、対象の商品を調べてから対応するそうです。

 また仮にお客さんの側に原因があったとしても、カルビーの製品がキッカケとなって気分を害したということで、きっちりフォローをするそうです。

 さらに、お客様相談室で受けた指摘を、ちゃんと製品開発などに反映できるように、社内での意見の交流をするような仕組みも整備されたようです。

 今やこうやってお客さんのナマの声をいろんなところに反映していかないと、なかなかムズカシイのかもしれませんね。

 

おしえて出口さん!/出口治明

 

おしえて出口さん! ―出口が見えるお悩み相談

おしえて出口さん! ―出口が見えるお悩み相談

 

 

 出口さんが期間限定で立ち上げた「おしえて出口さん!」というサイトに寄せられた相談をまとめた本です。

 『出口が見えるお悩み相談』というダジャレのような副題がつけられていますが、多くの悩み相談モノがグダグダした感じになって著者の“底”を見せてしまいがちですが、この本は逆に出口さんの“ブレなさ”が印象的です。

 「おわりに」でおっしゃられていることが、この本で取り上げられている相談への回答の多くに共通しているのですが、ほとんどの人が周りにとらわれ過ぎているんじゃないか、ということみたいです。

 再三、人生でシアワセになるためには「自分がしたいこと、楽しいと感じることをすればいい」とおっしゃっておられるのですが、多くの人は、虚栄心や世間体などに囚われて、そこから遠い所にいってしまいがちみたいです。

 出口さんが勧められているのは、共通して“そこ”に立ち帰るというシンプルなことなんだと感じます。

 「住んだことを愚痴る、人をうらやましいと思う、人にほめてほしいと思う。人生を無駄にしたければ、この3つをどうぞ」というコトバを引用されていますが、この本を
象徴しているように思えます。

 相談本には珍しく爽快な読後感がありますので、自信をもっておススメいたします。(笑)

 

悪魔の勉強術/佐藤優

 

 

 「知の怪人」佐藤優さんが母校であり、佐藤さんの知性の形成に大きな影響を及ぼした同志社大学神学部の学生に対して行った4回の講義を書籍化したものです。

 『年収一千万稼ぐ大人になるために』という佐藤さんのイメージからは意外な副題がついていますが、確かにそういったことを佐藤さんご自身がおっしゃってはいるのですが、内容としてはキリスト教の教義に忠実に生きるための方法論を語ったものと言えそうです。

 キリスト教は、個人的には意外な気がしたのですが、他の宗教と比較して現世での処世術的なものを重視する側面があるようで、そういう部分を現代の日本社会に即して語られます。

 残念ながらワタクシ自身はキリスト教の教義に疎いので、どこまでが教義で、どこからが佐藤さんの経験に基づくものなのかを判別しかねるのですが、キリスト教徒として社会で教義に忠実に生きていくこと自体が、成功に向けた行動につながるという側面が、色濃くあるようです。

 そのための行動としては、佐藤さんが再三著書で言及されているのですが、数学を数IIBレベルで習得しておくべきだと言うこと、就活においてはエントリーシートよりもSPIを重視すべきだということ、語学の修得において集中的な取組が重要だということなど、かなり実利的なことも語られます。

 実利的な本だと思って手に取って、読み始めたら実はキリスト教の話かよ!?ということで読むのを止めないようにしてください…おそらく今まで読まれたどんな実用書よりも効用の高いことが書かれているはずですから…(もっとも、取組むにはかなりキビシイ内容だったりしますが…)

 

中高年シングルが日本を動かす/三浦展

 

 

 丹念な取材や細かいデータに基づいた著作で知られる三浦さんが今回テーマとするのは“中高年シングル”です。

 長らく日本においては、夫婦と子供で構成される世帯を典型的なモノとしてきましたが、最早その前提が過去のモノとなりつつあり、シングルの消費動向を追うことが今後のビジネスにおける重要なテーマとなってくるようです。

 ということでヤング(35歳未満)、ミドル(35~60歳)、シニア(60歳以上)の男女ごとの消費動向を紹介しているのですが、ここ数十年で驚くべき変化が見られるようです。

 シニア層はそうでもないのですが、ヤング層、ミドル層において女性のオトコ化、男性のオンナ化が進展していて、例えば女性の飲酒に関する消費の増加、男性の美容に関する消費の増加が顕著なようで、消費の性差がなくなるどころか交差してしまいかねない状況みたいです(笑)

 未だ多くの日本人が抱いているステレオタイプの消費モデルは最早幻のようで、いち早くこういった性向に対応しなくては生き残っていけないかも…ですよ!

 

死ぬほど読書/丹羽宇一郎

 

死ぬほど読書 (幻冬舎新書)

死ぬほど読書 (幻冬舎新書)

 

 

 伊藤忠商事の社長を務められ、ビジネス界きっての読書家としても知られる丹羽さんによる読書論です。

 冒頭で「1日の読書時間が『0分』の大学生が5割を超える」という報道に対して、敢えて読書をする必要があるのか?という大学生が呈した疑問が取り上げられます。

 意外なことに丹羽さんは、別に楽しみを感じないのなら、敢えて読書をする必要はないとおっしゃいます。

 ただ人間には、欲望のおもむくままに行動する「動物の血」というものと、それを抑制しようとする「知性の血」があって、より人間らしく生きるために「理性の血」によって「動物の血」をコントロールする必要があり、そのためにも「理性の血」を養うために読書が必要となるということです。

 だからと言って、功利的な動機で本を読んでも思ったように得ることは多くはないようで、あくまでも自分の興味が赴くままに本を読んだ方が、効用が多いんじゃないかということを指摘されています。

 ただ、そういう「読書論」というよりも、読書を手がかりとしたエッセイのような趣があって、ご自身が読書をしてよかったという素直な想いがつづられていて、だからこそ、これまであまり読書をされてこなかった人にも響くのではないかという気がしました。

 

伝わる人は「1行」でツカむ/川上徹也

 

伝わる人は「1行」でツカむ (PHP文庫)

伝わる人は「1行」でツカむ (PHP文庫)

 

 

 以前紹介した『キャッチコピー力の基本』で「手元に置いて辞書的に使ってもらえれば」と書かれていたことから、よりコンパクトにして持ち歩きたいという要望を受けて文庫化され、より新しい事例を盛り込みながらエッセンスに絞って改訂されたバージョンがこちらだということです。

 “キャッチコピー”の書き方の教科書的なモノがベースになっているので“伝える”ということを学ぶと言う意味では多少の偏りがあるのは否めないのですが、いずれにせよキモとなることを相手にわかってもらおうとするという意味では同様なので、参考になるんじゃないかと思います。

 いずれにせよ、何かを伝えようとする際にキモに銘じておくべきだと川上さんがおっしゃっているのは、「誰もあなたの文章を積極的に読みたいとは思っていない」というシンプルな事実だということで、だからこそ如何にして相手に読む気になってもらうかという工夫を凝らさなければならないということです。

 そのことについて、如何に“自分事”として考えてもらうようにするかとか、ちょっと相手の感情を波立たせるとか、いろんな手法を紹介されていて、まさにカバンの中に入れておいて、いざという時に携帯の辞書代わりになりそうです。(文庫本なんで値段もお手頃ですしね!?)