京都ぎらい/井上章一

 

京都ぎらい (朝日新書)

京都ぎらい (朝日新書)

 

 

 ようやく『京都ぎらい』にたどりつきました。

 この本、読んでみるとかなりタイトルが先行してしまっているところが多いなぁ、と思うところが多い内容でした。

 井上さん自身、嵯峨という、京都の中心地から外れたところに住んでいたこともあって、洛中という、京都の中心地の出身者に少なからずコンプレックスを抱いていて、京都以外の人に、井上さんご自身が“京都人”扱いされることに違和感を感じられていたことを告白されています。

 まあ言ってみれば“中華思想”的なおハナシだとは思うのですが、余所者からみればリッパな京都人である井上さんを、郊外だということで、ナチュラルに蔑んでしまう洛中人と、悔しいながらもそれを受け入れてしまう、洛外人たる井上さんの葛藤を語られています。

 確かに伝統にはそういう犠牲が必要なのかもしれませんが、なかなか理不尽な犠牲が、陰に隠れているんだな、と感じざるを得ない内容でした。

 

関西人の正体/井上章一

 

関西人の正体 (朝日文庫)

関西人の正体 (朝日文庫)

 

 

 『京都ぎらい』の井上さんが1995年に出版された関西人論です。

 この頃の井上さんは『京都ぎらい』で顕著な斜に構えたモノの見方ではなく、結構面白おかしいアプローチを取られていたのが、ちょっと意外でした。

 関西人というと、ステレオタイプ的なイメージで言うと、少々下品で、ガサツで、スケベだといったロクなイメージが無いようなのですが、実際の関西人の生態はどうなのかということを語られます。

 だからと言って、関西人が品が良くて…みたいなありもしないことを言うワケではなくて、悔しいけれども当たらずとも遠からずといったことを語られています。

 ただそういう揶揄を甘んじて受け入れてしまっている関西人に対して、かつて日本の中心をなしていた時代のプライドを、少しでもいいから保ってほしということをおっしゃっていて、現在東京で生活している関西人としてのワタクシにとっても、多少耳のイタイところのあるお話でした。

 

マジメだけどおもしろいセキュリティ講義/すずきひろのぶ

 

 

 実はワタクシ、2018年4月から情報セキュリティに関する業務に携わっておりまして、その仕事の関係で手に取った本を紹介します。

 情報セキュリティって、なんとなく気を付けないと…とは思ってはいても、実際に自分がそういう事態の陥らない限り、あまりその痛みを実感できない人が多いとは思うのですが、そういう人は是非この本を一読いただきたいところです。

 この本のメインのターゲットはIT業界の、しかも実際にシステムの実装に携わっている人のようなので、それ以外の人にとっては、コーディングの詳細にも触れられていて、結構難解なところも多いのですが、昨今の情報セキュリティに関する表面的な
トピックだけを拾ってみても、かなり得るところの多い本です。

 というのもスマホの普及によるネット利用の爆発的な拡大や、PC、スマホにとどまらず一般家電にまでネットへの接続が広がっていくIoTの普及でネットのカバレッジが広がって利便性が格段に広がっていくと同時に、そういうITリテラシの低い人のところに影響範囲が広がっていくということで、悪意の攻撃の敷居が極端に低くなっているという側面もあるようです。

 例えばフィッシングやなりすましといった悪意の攻撃が、さしたる技術的な裏付けがなくても、カンタンにできるようになっているとともに、ダマし方も巧妙さを高めているということで、今やプロでもダマされずにいることが難しいようです。

 だからといって、今やネットなしでは生活が困難だという状況もあり、せめてこういう状況をアタマに置いておくべきなんだろうなぁ、と思います。

 

朝日ぎらい/橘玲

 

 

 『朝日ぎらい』というタイトルの本を朝日新書で出版するというなかなか大胆な試みですが、これは朝日出版社からじゃないとその真価が著しく低下するということで橘さん自ら朝日出版社に企画を持ち込んで実現した本だということで、橘さんの大胆さと朝日出版社の懐の大きさがなせるワザといったところなのでしょうか…

 『朝日ぎらい』というタイトルなのですが、別に朝日新聞をディスった内容だというワケではなくて、朝日新聞を代表とする旧来からのリベラルが如何にして攻撃をうけるようになったのかということを始めとして、自由主義的な考えの棲み分けやその周辺の思想との関係を整理されています。

 これまでも橘さんは再三“リベラル”とその周辺の思想について著書で取り上げてこられていたのですが、観念的な内容が多くてなかなか理解しなかったのですが、この本ではつとめて平易な例えを駆使して、非常に理解しやすくなっており、ようやく理解できたという実感が持てました。

 そんな中で、日本において嫌韓・反中がはびこる事態についてのリベラルとの関係や、絶妙に思想的なバランスの上になりたつ「安倍一強」のメカニズムなど、リベラルをキーにすることで非常にスッキリと整理できている気がします。

 これまでも橘さんの著書にはいろいろとウナらされてきましたが、より多くの人に受け入れられる作風に変化しつつある気がします。

 

野球エリート/赤坂英一

 

野球エリート 野球選手の人生は13歳で決まる (講談社+α新書)

野球エリート 野球選手の人生は13歳で決まる (講談社+α新書)

 

 

 高校生からプロに入りたての選手など、今後が期待される若手野球選手の成長の過程を紹介された本です。

 大阪桐蔭高校で“二刀流”で知られる根尾選手や、2015年の夏の甲子園での鮮烈な活躍が印象的だったオコエ瑠偉選手などが紹介されているのですが、最近は大阪桐蔭高校の積極的な中学生のスカウトぶりが話題になっているように、中学生以前の段階から争奪戦が繰り広げられているようです。

 そのためには小学生のうちから将来を見据えて、戦略的に成長の道筋を描く必要が出てきており、指導者や親御さんだけでなく、選手自身が主体的に自分の進路を選んでいくということが増えてきているようです。

 さらには、栄養の摂取やトレーニングの手法についても、かつてはプロでもここまではやってなかったんじゃないかと思うような取組に中学生が取り組んでいることということで、結構オドロキでした。

 2018年7月には、高校へ行かずに直接メジャーと契約することを選択した結城選手が話題になりましたが、今後は野球選手にも、それぞれの適性に応じた多様なキャリアパスが常識になるかも知れないと思うと、結構ワクワクさせられます。

 

 

歴史と戦争/半藤一利

 

歴史と戦争 (幻冬舎新書)

歴史と戦争 (幻冬舎新書)

 

 

 『昭和史』の半藤さんの著書なのですが、これまでの著書の戦争に関するフレーズを集めた本です。

 あとがきでこの本ができた経緯を紹介されているのですが、馴染みの編集者が半藤さんに、これまでの著書から戦争に関して書かれた内容を集めた本を作りたいということで持ち込まれたようで、最近著書でも加齢による根気の減退を打ち明けられている半藤さんは、とても自力ではムリだということで、これまた馴染みの編集者に白羽の矢を立てて、その役を委ねてこの本ができたということです。

 個人的にはこういう過去の著書のエッセンスを集めた本に結構強い違和感を感じるタチで、しかもそのエッセンスの抽出を他人に委託したということで、かなり興が削がれます。

 さらには編集側にも、“戦争”というキーワード以上の思い入れが感じられず、半藤さんの名声に寄りかかった安易な編集だなあという印象が否めないところで、購入を迷われている方には、これまである程度読んでいる方だと不要ですよ、と言いたいところです。

 

月3万円ビジネス 100の実例/藤村靖之

 

月3万円ビジネス 100の実例

月3万円ビジネス 100の実例

 

 

 以前『月3万円ビジネス』という地方で慎ましやかな生活スタイルを推奨する本を紹介しましたが、こちらはその実践編と言える内容となっています。

 「月3万円ビジネス」を自分のライフスタイルに合わせていくつか実行することで“それなり”の生活を実現しようということで、具体的に藤村さんご自身とそのお弟子さんたちが実践した「月3万円ビジネス」を紹介されています。

 100の事例が紹介されているのですが、見て見ると誰でも1つくらいは、これなら自分にもできそうだというモノが見つかりそうな気がしますが、特に都市部で企業に勤務している人が地方に移住した際に都市部ではコストがかかり過ぎて個人でビジネス
にするにはキビシいことが、地方ではリーズナブルに実現できて、しかも意外と需要が高いモノがあったりということで、意外なビジネスチャンスが結構転がっているようです。

 地方移住を考えている人にとっては、ちょっと辞書的にビジネスのヒントとして使えるんじゃないかと思えますので、手元に置いておいて、時折見返すといった使い方ができるんではないでしょうか!?