とんねるずと『めちゃイケ』の終わり/ラリー遠田

 

 

 元々テレビ番組制作会社に勤務しておられて、現在ライターとして活躍されている方が語るテレビの“現状”です。

 2018年3月に長らくフジテレビのバラエティー番組の象徴として放送されてきた『とんねるずのみなさんのおかげでした』と『めちゃ2イケてる!』の放送が終了したのですが、このことがテレビの一時代の終焉という風にとらえる向きもあったようです。

 個人的にはどちらの番組もほとんど見ていなくて、全くと言っていいほど思い入れが無いので、ふーん…という感じだったのですが、バブル期に「面白くなければテレビじゃない!」とのキャッチフレーズでイケイケドンドンだったフジテレビを象徴するような番組だったこともあり、フジテレビの時代の決定的な終焉とも捉えられているようです。

 確かにYouTubeを始めとしたネットメディアの台頭など、テレビの相対的な位置づけの低下はあったものの、それってアチラ側の人たちがアチラ側の論理で作っていたものを、かつてはある意味無条件でありがたがっていたところがあったものを、選択肢が著しく増加した現代においては、気に入らなければ見向きもしてもらえないというだけの話で、その証拠に、現在最も視聴率を挙げている日テレは視聴者のニーズを丁寧に救い上げた番組作りを心掛けているということのようです。

 ワタクシとしてはニュースとスポーツ中継以外のテレビ番組をそれ程見るワケじゃないので、こんなことを言うべき立場ではないのかも知れませんが、コチラ側の意図を汲んだモノを作れば、まだそれなりのニーズはあるんじゃないかと思うんですけどねぇ…

 

ロシアW杯総論/木村浩嗣

 

ロシアW杯総論

ロシアW杯総論

 

 

 スペインでサッカーの指導者をすると共にサッカー関連の著書、訳書も多い木村さんが、ロシアW杯のすべての試合をテレビ観戦して、そのトレンドを探ろうとした内容の本です。

 スペインが優勝した南アW杯やドイツがスペイン的なパスサッカーの要素を取り入れて優勝したブラジルW杯など、ここのところ攻撃的なポゼッションサッカーが席巻していましたが、木村さんは今回のロシアW杯における3つの必勝条件として、

 1.空中戦
 2.GK
 3.カウンター

を挙げられています。

 優勝したフランスが3つの要素をバランスよく兼ね備えていたワケですが、ベスト4以上のクロアチア、ベルギー、イングランドもいくつかの要素を兼ね備えていたようです。

 優勝したフランスは守備的な戦術が功を奏したのですが、カウンターや空中戦が席巻したからと言って必ずしも守備ガチガチだというワケではなく、決勝トーナメント1回戦で日本を下したベルギーのようにそういった要素を兼ね備えながら、テクニカルな側面も持つといったハイブリッドなチームも多く見られました。

 ただ、過去2大会と比べて、ロシアやスウェーデンなどクラシカルなロングボールを多用したチームが躍進するケースが多く、ドイツ大会以前の傾向に回帰したという側面も色濃くあったようです。

 とはいうものの割とスリリングな展開の試合が多く、個人的には楽しめたのですが、やっぱりそこには、出場国間の戦力差が縮まってきていることもあるようです。

 日本については、これまでのW杯での戦いぶりと比べて一皮剥けたと評価されていて、次の大会ではさらなる高みに上って行けるのかも…

 

辞めたくても、辞められない!/溝上憲文

 

辞めたくても、辞められない! (廣済堂新書)

辞めたくても、辞められない! (廣済堂新書)

 

 

 今野晴貴さんの『ブラック企業』でその実態が詳らかにされたのですが、人手不足が叫ばれるようになった昨今、影を潜めたのかと思いきや、カタチを変えて悪質さは増しているようです。

 今野さんが取り上げられたときは主に“使い捨て”の問題が取りざたされていましたが、この本では主に“辞めさせない”現象を取り上げます。

 空前の人手不足を受けての人材の確保のためにブラック企業からの退職を希望する人に対して、様々な策を弄して、時には脅迫も交えた手口を紹介されています。

 作者である溝上さんはそんな様子を小林多喜二の『蟹工船』に描かれた強制労働になぞらえておられて、その歪んだ構図を指摘されます。

 それにしても、それを受け入れてしまう労働者側としても、人手不足とは言え、一度正社員でなくなると再び正社員に復帰することが難しいという状況もあり、かつ労働法制についての知識が著しく欠如していることにも付け込まれており、最悪自死を選ぶ人までいるようです。

 正しい知識を身に付けて、毅然と行動することも時には必要なようです。

 

変わろう。/井口資仁

 

 

 2018年シーズンから千葉ロッテマリーンズの監督を務める井口さんの自伝的な著書です。

 この本は井口さんが現役を引退したタイミングで監督就任のオファーを受け、就任を決めたタイミングで執筆された本だということで、現役生活を振り返ると共に監督としての意欲を表明するといった内容になっています。

 井口さんというとダイエーからメジャーリーグホワイトソックスに移籍し、ワールドチャンピオンとなったシーズンでは、チーム戦術である“スモールベースボール”を象徴する選手として活躍し、日本に戻ってからも長らくマリーンズの精神的な支柱として活躍をされました。

 日本人メジャーリーガーとして数少ない内野手の成功者であり、かつ日本に戻ってプレーをした元メジャーリーガーの中でも数少ない成功例でもありますが、井口さん自身が長きに渡って活躍できた理由について、ダイエー時代の王監督ホワイトソックス時代のギーエン監督との出会いを挙げておられます。

 お二方とも選手とのキメ細やかなコミュニケーションをするタイプの監督だということで、選手時代には意気に感じることもあったでしょうし、監督になってからも重要なロールモデルとして考えておられることでしょう。

 直接的にこの本の中で成功要因として挙げられているワケでは無いのですが、井口さんはホントにプレーについて突き詰めて考えておられたようで、だからこそ新しい環境に移っても活躍ができたんだと思います。

 監督就任1年目は、それまで長らく続いた最下位から1つだけ順位を上げるにとどまりましたが、井口イズムが浸透していけば、黄金期を迎えるんじゃないかという期待を抱かせます。

 

目的なき人生を生きる/山内志朗

 

目的なき人生を生きる (角川新書)

目的なき人生を生きる (角川新書)

 

 

 中世哲学を専門とされている方の著書ですが、この本は「目的なき人生を生きる」といったテーマを手掛かりに、人生の様々な事象について倫理学の観点から語るといった本です。

 哲学や倫理学って、個人的に興味はあるのですが、どこか恐ろしげで近寄りがたいところがあって、今までそういった本を手に取れていなかったというワケです。

 で、この本ですが、身近な話題を倫理学的に語られているのですが、あるところまではホントに身近なことを語られているので、理解できるのですが、ある段階でわからなくなるというあまり意味のないことなってしまっています。

 アニメ映画『君の名は』なども例に挙げてできるだけ読者に親近感を持たせようと務められているのですが、ワタクシとしては何とも近づいていけないという…

 倫理学というは、内面から人間の行動を縛るという概念が印象的だったのですが、何とかもう少し倫理学に近づいて行きたいという気はしたのですが…

 

私物化される国家/中野晃一

 

私物化される国家 支配と服従の日本政治 (角川新書)

私物化される国家 支配と服従の日本政治 (角川新書)

 

 

 安倍政権による「国家の私物化」を糾弾された本です。

 この本を書かれたのは上智大学のセンセイなのですが、これまでもかなり安倍政権に対するキビシイ意見を出し続けられてきて、かなりタイトに政権からマークされているようです。

 この本では安倍政権をトランプ政権のアメリカや金正恩政権の北朝鮮になぞらえており、逆にそれくらい「独裁的」な側面を見せているということで、その政治的な思想や手法に迫られます。

 政治的な思想としては、おじいさんである岸信介に大きな影響を受けているということで、保守反動的な思想が色濃いということです。

 かなり強引な手法ですが、民主党政権が大きく国民の期待を裏切ったこともあり、民主党政権時に積もり積もった官僚の不満も相まって、うまくそこにつけこんだというところがあり、官僚やマスコミも含めてすっかり“安倍の犬”と成り下がってしまって、独裁体制は安泰のようです。

 ワタクシを含めて「おともだち」ばかりが得をする状況にモヤモヤする人がいる一方、経済の小康状態のためにはそこに目をつぶろうという人もいるワケですが、でもそうしていると国民ごとアメリカに「売られ」かねないことにも目を向けないといけないのかも知れませんよ…

 

 

運は人柄/鍋島雅治

 

 

 『築地魚河岸三代目』などの原作を手掛けられた漫画原作者の方の著書です。

 「運は人柄」だということで、普段から周囲の人に愛想よく話しかけるように心掛けていると、色んな人、特にエライ人から可愛がられて運が開けますよ、ということをご自身のキャリアを振り返りながら説かれます。

 まあ、この本で言いたいことのほとんどは“これだけ”でご自身のキャリアの転機でマンガ界の重鎮から可愛がられてきたことを語られているので、そちらの方に興味のある方にはオモシロいかも知れません。
 
 『人事部は見ている』の楠木新さんが、人事部が社員を採用する際に重視しているのは、その人とキモチよく働けそうかという観点だということをおっしゃっていたのを思い出したのですが、やっぱり「いい人」に見せることが運を開くことにつながるっていうことなんでしょうね!?