スローカーブを、もう一球/山際淳司

スローカーブを、もう一球/山際淳司

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

スローカーブを、もう一球 (角川文庫 (5962))

 現在のスポーツライティングの、ある意味草分け的存在のスポーツライ
ティングに於ける処女作です。

 先日、『スポーツライターになろう!』を読んでいて、山際淳司氏の
影響を悪く受けたライターたち…みたいな書き方をされていたので、
気になって久々に手にとってみました。

 悪影響について、山際氏のポエティックな書き方を表面上だけ真似て、
云々と言うことを書かれていたのですが、確かにそういう書き手がいる
なあ、と…
 確かにマネをしてみたくなる気持ちはわかるんですよね。
 何となく見た目がキレイになる部分がありますからね。

 でも、山際氏のスポーツライターとしての凄みというのはそこにある
のではなく、代表作である『江夏の21球』に見られるような、ある意味
「シロウトの開き直り」も含めて、徹底的にディーテールに着目して、
その心理的な動きを描写したところではないのでしょうか?

 ただ、それってやっぱりかなり書き手にしても、取材される側にしても
負担が大きいでしょうし、そういう題材の対象となる人がそこまで対応し
てくれることも少ないでしょう。

 山際氏にしても、その後『江夏の21球』に類するような作品を手にして
ないですし、彼のエピゴーネンが形だけ真似た、爽やか系の作品を多く
世に出しています。

 ま、個人的にはそれも好きなのですが、スポーツライティングの本質から
すると傍系ですよね。