たったひとりのワールドカップ/ 一志治夫

 カズの、ドーハの悲劇からフランスW杯までの軌跡を、本人に密着し、本人の言葉で
たどった本です。

 この本が出た当初、お抱えの御用ライターに書かせた感があって、あんまり好きな本じゃ
なかったのですが、改めてこの本を読んでみて思ったのが、やっぱりカズって、ある意味
自己演出というか、自分がこう見られたい「三浦知良」にすごく一貫性があって、特に
この頃は、その統制がキッチリしていたこともあって、あんまり意外性がなくて、面白く
ないのです。

 しかも、カズにフォーカスを当てるっていうのは、それはそれでいいと思うのですが、
あまりにフォーカスしすぎてて、周りの描写が著しく少ないので、今になって読んでみると、
なぜそうなったのか、と言ったような状況がわかりにくかったりします。

 引退する頃には、特に、フランスW杯のメンバーから落選したあたりを中心に、もっと
赤裸々な肉声が聞けるようなモノがあったらいいな、とないものねだりをしたくなるような
印象の本でした。