ぼくはお金を使わずに生きることにした/マーク・ボイル

ぼくはお金を使わずに生きることにした

ぼくはお金を使わずに生きることにした

 神田さんが『2022―これから10年、活躍できる人の条件 (PHPビジネス新書)
の出版記念講演の冒頭でこの本のことを紹介されているのを聞いて、ずっと読みた
いと思っていた本なんですが、例によって図書館の予約が途切れる頃を狙っていた
ので、一年越しの念願達成となってしまいました。

 この本は、イギリス在住のアイルランド人の青年が、1年間お金を使わずに生活
をしてみた体験をつづった本です。

 その内容は、一面では物質社会に対する痛烈な批判的メッセージでもあるのです
が、そういう攻撃的な側面は、生活におけるトラブルも面白おかしく笑い飛ばす
ユーモアのオブラートに包まれて、鋭くは無いのですが、しっかりと我々の胸に
届いてくる気がします。

 奇しくも、東日本大震災からまる2年の今日に、この本を紹介することを狙った
わけではないのですが、ちょっと意義のあることなのかな、と思っています。

 と言うのも、東日本大震災をきっかけに、日本人は人々との絆の重要性を口に
するようになったのですが、この本が取り上げる「金なし生活」の本質も、そう
いうところにあるんじゃないかな、と思っています。

 なぜなら、今の世の中において、「金なし生活」を送ろうと思ったら、完全な
自給自足の生活を送るのは不可能だと、著者も言っています。
 どうするか、と言うと、「助け合い」なのです。

 お金は、本来「信頼」をベースに成り立って来たのですが、その機能だけが
暴走してしまって、寄って立つベースである「信頼」とは真逆の方向に追いやっ
てしまったんじゃないかと思っています。

 そういう意味で、人間らしさを取り戻すために、一度お金の本来の「意味」、
ひいては人間性の意味を思い起こす意味でも、是非ともこの本を手に取ってみて
いただきたいと思います。