ワクワクするビジネスに不況は、ない/小阪裕司

 1997年に書かれた本を一度リメイクしたのですが、文庫本にするに
あたって、再度元に戻して出版したということです。

 小阪さんは、1997年時点で書かれたことが未だ有効性を持っている
とおっしゃっていますが、文庫本が出版された2005年にとどまらず、
未だに、この本で紹介されているような手法を取り入れているビジネス、
特に大企業は、稀で、時代が追いついていないんじゃないか、と感じ
ました。

 以前、『招客招福の法則―儲けの王道がみえる88の話』でも紹介
されていたのが、「工業社会」と「感性社会」のロジックの違いを
指摘されていましたが、それ以前に出版されたこの本のほうが、顧客
側の本質的なニーズの違いを指摘されています。

 元々、戦後、必要なものを満たすことに満足を覚えていたのが、
段々と消費者側が「自己実現」を満たすための消費行動に移って行っ
た、ということを指摘されています。

 それでも、バブル期までは、所有することによる自己実現みたいな
部分もあって、モノは売れたのですが、反面、生活に必要なものに
ついては、如何に安く手に入れるか、ということで、厳しい目を向け
られている、と言う2極分解を起こしてた、ということです。

 さらに、バブル期以降は、最早所有することによる自己実現も効力
を失っている部分があって、「ワクワクする」経験に向けた消費、
というものが重視されるようになっている、ということです。

 この本では、そういう消費者の本質的な変化と、変化した後に消費者
に如何にしてアプローチするか、と言うことが紹介されています。

 その中で、供給者側が、自分のミッションをどのように定義するか、
が重要だとおっしゃいます。

 単純に自分が持っている商材を売る、と言うことがミッションなので
はなくて、その商材を消費者が使った結果、どういう「ワクワク」を
提供できるか、ということを消費者に訴求できなければ、売れない、
もしくは売れても利益が確保できない、ということになり、逆に言うと
その「ワクワク」に消費者の共感が得られれば、価格競争とは無縁に
なる、ということです。

 「わかってるんだけどなあ…」って声が聞こえてきそうになりますが、
やっぱりそこを突き詰めないと、今後難しいんでしょうね…