<勝負脳>の鍛え方/林成之

<勝負脳>の鍛え方 (講談社現代新書)

<勝負脳>の鍛え方 (講談社現代新書)

 脳外科医の林先生が一般書として書かれた初めての本なんだそうです。

 なので、ちょっと整理できてない印象があって、後年の著書のような、
グイグイ読み手をのめり込ませるような構成に放っていませんが、丹念
に読んでいくと、興味深い内容が満載です。

 スポーツにおいて、ここ一番でチカラを発揮する機能を、林先生は、
<勝負脳>と名づけ、その脳科学的な機能について説明されるのが主な
テーマとなっています。

 野球でのたとえで、ピッチャーが時速150kmの球を投げた場合、ホーム
ベースに到達するまでの時間は、0.45秒になるのですが、バッターは、
スイングの時間が0.2秒、脳が指令を下すまでの時間が0.3秒ということ
で、本来は間に合わないはずなんだそうです。
 そこで、活用されるのが、「イメージ記憶」というもので、経験に
基づいて蓄積された記憶を元に、ピッチャーがボールを手放す前に、
既にスイングを始める指令が出されているそうです。

 そういう能力をつかさどるのが<勝負脳>だとおっしゃられており、
そういう<勝負脳>を作り上げるためには、普段から具体的な課題を
もって、練習や試合に取り組んで、経験に基づいて解決策を見出して
行くことが重要なんだそうです。

 また、結構マラソンの戦略についての脳科学的な考察も、この本では
多く取り上げられており、いわゆる「30kmの壁」について、これまでも
いろんな本で、その原因について読みましたが、この本での林先生の
説が一番しっくり来ました。

 是非、スポーツの指導者に読んでもらいたい本ですね。