臆病者のための裁判入門/橘玲

臆病者のための裁判入門 (文春新書)

臆病者のための裁判入門 (文春新書)

 橘さんの著書って経済関係のものが多いので、タイトルを見たときは、「ん?」
って思いましたが、内容は非常に「らしい」ものとなっております。

 「裁判」と言うものの、取り上げられるのは刑事裁判ではなくて、民事裁判、
しかも、弁護士が見向きもしようとしない、少額の紛争に関する裁判なのです。

 こういうニッチな感じが橘さんらしいですね。

 本人曰く、裁判については門外漢だということなのですが、なぜそもそも門外漢
の橘さんがこんな本を書くことになったのかというと、橘さんの友人であるオース
トラリア人が事故に巻き込まれて、損保会社との紛争になったことについて支援を
求められたからなんだと言うことです。

 それにしても、民事調停の不調は、まあ理解できるのですが、簡裁と地裁のたら
いまわし、挙句の果てに高裁まで上訴した上での和解など、途中から、「本のネタ」
になる、と食いついた橘さんの思惑通り(裁判の結果はともかくとして…)の波乱
万丈のドラマとなっており、無味乾燥で面白くない、という印象が吹っ飛びます。

 それにしても、いろんな意味で、少なくとも少額紛争に関しては、欧米と比較し
て、裁判制度の形骸化、と言うか、制度の抜け穴が多いようで、その辺りに関して
警鐘を鳴らされています。

 でも、こういう知識って、イザというときに必要かもしれないんで、この本で
楽しく学んでは如何でしょうか?