日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル/橘玲

日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル

日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル

 安倍政権インフレターゲットを設定して、デフレ脱却の政策を打ち出した
いわゆるアベノミクスが始まった頃に出版された本なのですが、今のところ、
そこまでの危険性は顕在化していませんが、始まったばかりの頃で、橘さんは、

?楽観シナリオ:アベノミクスが成功して、経済成長が再び始まる
?悲観シナリオ:政策の効果が無く、円高によるデフレ不況が継続する
?破滅シナリオ:国債の暴落と高インフレで財政破綻を招き、国家破産となる

というシナリオがありえるとされていて、?の破滅シナリオが現実のものと
なったとしても、自分の資産を守っていこうというのが、この本の趣旨です。

 ?の破滅シナリオは、

第1ステージ:国際価格が下落して金利上昇
第2ステージ:円安とインフレの進行で、国家債務の膨張が加速
第3ステージ:国債がデフォルトを起こし、IMFの管理下に入る

というプロセスで起こるようです。

 そういったプロセスの各フェイズにおいて、こういう考え方で資産防衛を
図るといった方法論が、具体的な金融商品と、想定される相場の動きと、
対策をとった場合のリスクヘッジの度合いが詳細に説明されます。

 橘さんといえば、処女作『マネーロンダリング』でも
顕著なように、金融を交えてアンダーグラウンドのドロドロした世界観を
描くが得意な印象があって、この本もそういう手法なのかな、と思ってい
たのですが、やたらと不安を煽るのは本意ではない、ということで、そう
いうトーンは抑えられており、他の作品を知るワタクシとしては、却って
破滅シナリオの現実感を示唆されているように感じられて、背筋が凍る想
いがします。