ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義/藤野英人

 

ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義 (PHPビジネス新書)

ビジネスに役立つ「商売の日本史」講義 (PHPビジネス新書)

 

 

 日本史をビジネスの観点から振り返るという興味深い本です。

 この本によると、日本人のキャラには、オープンで自由を好み、
商売にも積極的な「ウミヒコ」的なキャラと、マジメで規律を好み
土着的な「ヤマヒコ」的なキャラの二つの側面があり、時代毎に、
交互に二つのキャラが台頭する時期を繰り返してきた、というの
が、ものすごくザックリとした経済的な史観だということです。

 ちょっと振り返ってみると、
奈良時代~平安前期:遣唐使 → ウミヒコ的
平安後期 :国風文化 → ヤマヒコ的
平家の時代 :日宋貿易 → ウミヒコ的
鎌倉時代 :「一所懸命」 → ヤマヒコ的
室町時代日明貿易 → ウミヒコ的
江戸時代 :鎖国 → ヤマヒコ的
という具合のようです。

 ただ、鎌倉時代の土地への執着や江戸時代の商人の地位など、
脈々と日本人の現在の経済活動にも影響を及ぼしているような
政策を指摘されていたりと、非常に興味深い内容になっています。

 江戸時代の「改革」に関する指摘でも、歴史観的には、清廉な
政治をしたとして寛政の改革松平定信が評価されて、汚職を
助長したとして田沼意次の評価は低いですが、経済的な貢献度を
見てみれば、真逆の評価を下さざるをえないというのが印象的で
す。

 長い歴史の中で形成されてきたキャラというのは、なかなか
払拭できない部分もあると思うのですが、妙な価値観でビジネ
スを損なわないようにしたいものですね。