資本主義の終焉と歴史の危機/水野和夫

 

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

 

 

 先日、『「世界で戦える人材」の条件』を紹介した、渥美育子
さんのセミナーを受講した際に、推薦図書として挙げられていた
ので、早速手に取ってみました。

 著者の水野さんは経済学がご専門だということなんですが、
この本は文明論的な内容がテーマになっています。

 テーマとしては、タイトルにある通り、リーマンショックに端
を発したアメリカの不況や、日本の長きに渡るデフレ、ヨーロッパ
の複合的な不況も、資本主義の終焉を示す現象なんだということ
です。

 と言うのも、資本主義というのは基本的に拡大主義であり、前提
として、資源が極めて安価で入手でき、かつ拡大対象としてのマー
ケットが存在することなんですが、オイルショック以降、前者の前
提が揺らぎ、もはやアフリカを除いては拡大すべき対象がなくなっ
てしまっており、そういう資本主義の“前提”が揺らいでいること
の歪みが、リーマンショックだったり、日本の長期不況だったり、
ヨーロッパの危機だということです。

 この“資本主義の終焉”ということについて、今後どうなるのか、
ということまでは、この本の中では言及されていませんが、“資本
主義の終焉”ということを認識せずに、“資本主義”的な対処療法
に終始されている現状に危うさを感じざるを得ない、そんな本です。