絶望の国の幸福な若者たち/古市憲寿

絶望の国の幸福な若者たち

絶望の国の幸福な若者たち

 『働き方は「自分」で決める (講談社文庫)』が相当印象に
残ったので、早速別の著書を手にとって見ました。

 『働き方は「自分」で決める』は
どこか橘玲さんの著作を思わせるところがあったのですが、
この本は、どことなく沢木耕太郎さんの初期のルポルタージュ
特に『敗れざる者たち』を思い起こさせました。

 というのも、『敗れざる者たち』も当時の若者たちを扱って
いたということろもあるのですが、全体に漂う退廃的な雰囲気
がより相似を感じさせます。

 で、この本はタイトルどおり現代の若者論なのですが、端から
みたら、さしたる夢も希望も見出せない中で、反乱でも起こして
しかるべきだという見方もできるような状況の中で、それなりに
満足して生きている、という現代の若者の側面を描いています。

 ではなぜ、現代の若者が「それなりに満足」しているか、と
いうと、「満足」というものを、経済的な側面と、「承認」の
側面から検証されています。
 経済的には、別に食べるものに困るわけではなし、携帯を持
てて、それなりに遊ぶこともできて、上をみればキリは無いけ
ど、あんまり上昇志向も無いので、そんなに不満を覚えるほど
でもない、という感じのようです。

 さらに、「承認」の側面から言うと、SNSの発展により、
TwitterFacebook、LINEなどで発信すれば、それに対して何
らかのリアクションが返ってくる、というところで、人との
つながりを持てていることから、それなりにこちらも満たされ
ているようです。

 著者の古市さんは、年代的には、題材となっている人たちに
近いがゆえに、却ってプレーンな見方ができているように思え
ますが、ちょっと空恐ろしい気がしました…というところが、
やっぱり橘玲さんを思わせると思うのですが…如何でしょう?