希望難民ご一行様/古市憲寿

 新進の社会学者、古市さんのデビュー作です。

 デビュー作は、何と修士論文がベースになっていると言うことで、修士
論文がそのまま出版と言う驚くべき才能です!

 本の内容としては、古市さんが頻繁に題材として取り上げておられる若
者の「承認」に関するもので、ピースボートの世界一周に同乗して、「承
認の共同体」としての機能を観察するものです。

 ピースボートに乗る人たちを類型化して、それぞれの人たちの「承認」
に関する行動について「仮説と検証」をされているところなど論文チック
なんですが、トラブルの際の対処など、同乗している年配者との軋轢な
ど、オトナとの世代間闘争なんかもあって、小さな「社会」を形成して
いるところが興味深く感じます。

 『絶望の国の幸福な若者たち』でも、
承認欲求が満たされることによって、現状に満足する若者たちが描写さ
れていましたが、ここでもコミュニティに属すると言う「承認欲求」が
満たされることによって、社会的に抜きん出ることを「あきらめさせる」
機能を果たしていることに言及されています。

 でも、これからの世代の多数が「あきらめ」てしまったら、今後日本
はどうなっていくんだろう、と漠然と不安を抱いてしまいます。

 修士論文がベースと言うこともあって、『絶望の国の幸福な若者たち』
で纏っている一種独特のダークな雰囲気は希薄ですが、この段階でこの
世界観を持っているというのは、スゴイなあ…と感心します。