本を読む人だけが手にするもの/藤原和博

 

本を読む人だけが手にするもの

本を読む人だけが手にするもの

 

 

 ひと頃、和田中学校での校長としての経験に基づく著書が続いて食傷気味だった藤原さんの著書ですが、近作ではその経験をうまく織り交ぜて、かつ新しい切り口でのアプローチの作品で面目躍如な雰囲気があるのですが、この本は、決定版かも知れません。

 元々、よのなかで生き延びていくためのチカラをつけるための教育を強調されてきた藤原さんですが、近年では、高度成長期のような、いい大学に行って、いい会社に入って、ひたすらガンバって行けばシアワセになれると言うような「答え」は最早存在せず、自分で自分なりのシアワセをデザインして、どうそのゴールにアプローチするのかも、自分で考えなくてはいけなくなっているとおっしゃいます。

 元々、決まった答えに向かって「早く正しく」答えを求める情報処理能力が求められたのが、自分で答えを見つけて、そこへ如何にアプローチしていくための情報編集能力が求められるようになっているということです。

 そのために、読書することが従来にも増しての重要になってきているということです。

 というのも、自分が自分のシアワセに近づくために必要となるノウハウを全部自分で経験して仕入れるというのは不可能で、それをそれぞれの分野のエキスパートの「脳のかけら」を読書ということで借りてきて、それを自分なりに組み立てることで、ゴールに近づいていけるということです。

 コドモに本を読め!といって、「何のために?」と聞かれて絶句しないためにも、すべての親にとっての必読書なんじゃないかな、とすら思った好著でした。