ぼくらの頭脳の鍛え方/立花隆、佐藤優

 

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)

ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)

 

 

 「知の巨人」立花氏と「知の怪人」佐藤氏による読書に関する対談です。

 佐藤氏は、教養を身につけるための読書ということで、いくつかの著書がありますが、それらの中でずっとこの本のことに触れられていたので、ようやく手に取ってみました。

 この本の中で立花さんがおっしゃっていたことで印象的だったのが、立花さんが教えている学生が「どんな本を読んだら教養が身に付くのですか?」という質問を受けて、立花さんが面喰ったというお話しです。

 なぜ面喰ったかと言うと、どうやら学生は、こういう本を読んだら一揃えの「教養」というものが身に付くという「共通的な認識」があると思っていたということで、正解主義の悪弊が端的に表れたところだと思います。

 佐藤さんのエピソードで印象的だったのが、鈴木宗男氏との絡みで背任容疑で逮捕された際に、取り調べを受けながら、もう少しで偽りの自白をしてしまいそうになった時に、この状態はあの本で読んだああいう心理なんだ、ということを冷静に振り返ることが出来て、自白を思いとどまることが出来た、という体験を紹介されています。

 「教養」と言うのはすなわち「生きていくチカラ」であり、人生がそれぞれ違うように、立ち向かうべき問題もそれぞれに異なる…とは言いながら、共通して起こる問題も少なからずある、ということで、自分なりに問題意識を持ちながら、本の助けを借りて、生きていくための知恵を積み重ねていくことこそが、「教養」を高める、と言うことなのかもしれません。