昭和史1926-1945/半藤一利

 

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

 

 

 藤原さんの『本を読む人だけが手にするもの』の推薦図書として挙げられていて気になっていたのですが、戦前編、戦後編それぞれ500ページ以上の大著ということで、なかなか手が出なかったのですが、覚悟を決めて手に取ってみました。

 とはいうものの、講義録的なもので、話し言葉で書かれているせいもあるんでしょうけど、内容が圧倒的に面白くて、思ったよりもずっとスムーズに読了しました。

 戦前編と言うことで、アメリカとの戦争に突入して敗戦していく過程が描かれていて、半藤さんもこの本の中で、なんでこんなバカバカしい…と言った表現をされていますが、軍部のみならず、政府、マスコミ、国民挙げて、自分たちに陶酔して、そのままに破滅へと暴走していった、といった感じでしょうか…

 特に、徹底したリアリズムが求められるはずの職業軍人が、自己陶酔の極致にあり、戦力的、物量的にどう考えても劣っている相手に対して、精神力だけで向かっていこうとしたこと、それなのに、精神を陶冶するところか、内部での足の引っ張り合いに終始するところなど、そのために死んでいってしまった人を思うと、呆然とする思いです。

 それにして、こういう結果を冷静に見通しながら、それに対して有効な手を講じることができなかった昭和天皇の無念さは、察するに余りあります。