「明治」という国家/司馬遼太郎

 

「明治」という国家

「明治」という国家

 

 

 せっかく「昭和」の方を読んだので、「明治」の方もということで…

 司馬さんは明治時代を舞台とした小説を数多くモノにされてきたのは周知の通りですが、それは司馬さん自身が明治時代を、日本史上において日本民族が最も輝いた時期だと捉えていることに起因しているようです。

 なぜ、「もっとも輝いた」と思われているのかというと、日本全体が国全体として、それまで蓄積したものを糧として、共通の目的に向かって邁進していったからだと言えるかもしれません。

 「共通の目的」というのは、欧米列強に従属するのではなく、同列に伍することを志していったということです。

 ただ、何の裏付けもなく、欧米に伍する国を目指すことができたわけではなく、江戸期に蓄積された「豊かな文化」があったからだと言えます。

 江戸期というと、鎖国政策の影響で停滞期と捉える向きがありますが、貨幣経済の進展に伴い、欧米にも例がないほどの識字率を誇るようになったことから、独自に様々な学問が進展していったようで、そういうバックグラウンドがあってこそ、列強から世界への扉をこじ開けられた直後から、同レベルを目指すといった、一見無謀な取組を現実にすることができたのでしょう。

 最近、ミョーに日本優位論を主張したがる人が多いので、火に油を注ぐ感じがしないでもないですが、こういう輝かしい時期があったことを、ココロの拠り所にするというのは、悪いことではない気がします。