明治維新において実業界の基礎作りに尽力し、日本の「資本主義の父」と呼ばれる、渋沢栄一の講演を集めたものを、現代語訳した本です。
渋沢栄一は明治維新後、政治の体制が整えられていく中で、経済の仕組みの整備の遅れに注目し、その商工会議所の設立や、株式市場の開設などといった環境の整備に尽力するわけですが、その中で、商業に携わる人のモラルの向上に向けた啓蒙活動にも注力したというわけです。
高度な精神教育を受け、高い倫理観を持っていた武士階級に対し、実用的な学問だけしか受けていなくて、ともすれば、儲けるためなら手段を選ばない、という側面もあった実業界が、世界と対峙する上でのモラルを持って欲しい、ということで、商売をする中で『論語』の教えを取り込もうとして、そういった教えがこの本に込められています。
必ずしも、商売に絡むことばかりではないのですが、『論語』にある教えを、その時代に合った形で伝えているところが、今につながる部分があるなあ、という気がします。
現在、企業の偽装なんかが取り沙汰されていますが、そういう意味で、今なお、耳を傾けるべき内容なんじゃないかと思います。