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流星ひとつ/沢木耕太郎

 

流星ひとつ (新潮文庫)

流星ひとつ (新潮文庫)

 

 

 この本は、沢木さんが31歳の時に、当時歌手を引退しようとしていた藤圭子さんへのインタビューから構成された本なのですが、何と二人のインタビューでのやりとりだけで構成されているといった、実験的な手法が取り入れられています。

 当時沢木さんは、“ニュージャーナリズムの旗手”と言われ、あたかも見てきたかのような臨場感でノンフィクションを書くとか、私ノンフィクションとかといった先進的な手法を駆使して、ノンフィクションの可能性を拡大しようと模索していた時期でした。

 そういう作品の一環だと言えるのですが、この本は藤圭子さんへの悪影響を懸念して、長く封印されていたのですが、藤圭子さんの自死を契機に出版をすることになったようです。

 そういう実験的なニオイの強い本だと、ミョーにアタマでっかちな本ができそうですが、作為を最低限にすることで、逆に藤圭子さんの“素顔”がくっきりと見える気がするのが不思議です。

 寡黙というか、ミステリアスな印象がある藤圭子さんですが、かなり芯が強いというか、自己主張の強さを感じさせるところがあって、結構意外な気がしました。

 沢木さんのそういう試行錯誤が決して自己目的化するのではなく、純粋に表現の幅を広げるためにあったんだ、ということを改めて強く感じます。