新・戦争論/池上彰・佐藤優

 

 

 「ニュースの良心」池上さんと「知の怪人」佐藤さん、お二方の対談による戦争論です。

 冒頭に、安保法制に関する与党、野党、世論それぞれの言わんとするところを紹介されて、いずれもキモのところを外した議論をしていて、結局、法案を作ったはいいわ、何もできない法律を作ってしまいました…ということで、日本人の国際感覚のズレを指摘されています。

 半藤さんと出口さんの対談本で、日本人はプレーンに世界で起こっていることを見るのが苦手だ、という指摘をされているのを、このブログでも紹介しましたが、同様の指摘をされているんだと思います。

 北朝鮮の情勢を紹介しているところで、安倍政権の対応に言及されているのですが、世間で安倍首相の対応が“単細胞”と言われているのに対して、佐藤さんは“半細胞”と痛烈な一発をカマされています。

 というのも、自分の支持率を上げたいがために、拉致被害者をカネで買って、そのカネが核兵器開発に費やされているのを見て見ぬフリをしているということで、世界平和と支持率を引き換えにしているという批判を展開されています。

 それぞれ世界中を“プレーン”に見るというのが、お二方のおっしゃる“インテリジェンス”に近いんだと思われますが、この
本が書かれた2014年当時、世界を“インテリジェンス”と通して見ると、こうなんだということが、各地域について紹介されています。

 重装備を選択しなかった日本が、何を武器に戦っていくか、というと“インテリジェンス”のはずなんですが、それも相当に立ち遅れているということに対する、お二方の苛立ちがありありと感じられた次第でした。