サッカー通訳戦記/加部究

 

サッカー通訳戦記

サッカー通訳戦記

 

 

 日本サッカー界において活躍された通訳者の方へのインタビューで構成された本です。

 つい最近まで、サッカーにおいて「まともな」通訳者を確保することすら難しかったようで、世界的な名選手であった元ブラジル代表のファルカン氏についた通訳は、ほと
んどまともに訳すことすらできていなかったようで、実はそのことがファルカン氏が日本代表で成功を収めることができなかった大きな原因じゃないかと、指摘されています。

 日本代表監督の通訳からJリーグのクラブでの選手向けの通訳まで、10人の通訳の方へのインタビューで構成されています。

 どの方にも共通しているのが、必ずしも言っていることを逐語的に正しく翻訳すること自体が重要なのではなくて、話し手の個性を理解し、その場面場面でホントに言いたかったことは何なのかということを順次に判断して、一番伝わるような表現を選び取って伝えなければならない、と言うことで、何と難しい作業なんだろう、と思います。

 だからこそ、こういう世界での通訳を目指す方は、勉強ばっかりしているのではなくて、対応力をいかに伸ばして行くかということと、通訳をする相手をいかに理解するか、というコミュニケーション力を磨いた方が役に立つんじゃないか、とすら思えます。