本物のビジネス英語力/久保マサヒデ

 

本物のビジネス英語力 (講談社+α新書)

本物のビジネス英語力 (講談社+α新書)

 

 

 長らくロンドンの銀行で勤務されていた方による本なのですが、ちょっとタイトルは「卑怯」です。

 というのも「英語力」と言いながら、実際の内容はグローバルビジネスの場におけるコミュニケーションの「お作法」ともいうべき本で、著者の久保さんも、コミュニケーションのツールとしての英語の運用力よりも、如何にコミュニケーションを図るか、というスキル自体の方が重要だと強調されます。

 久保さん自身初の著書みたいで、本来なら「コミュニケーション力」を前面に出したいと思われたはずなのですが、編集者に「英語力」の方が売れますよ!と強く出られたら、敢えて押し返せなかったと推測できますが、読者としては釈然としない人も多いんじゃないかと思います。

 というのも、この本のメインとなる読者層は、ある程度以上英語でのコミュニケーションができるスキルがすでにある人で、それを使って如何にコミュニケーションをとるか、ということがテーマなので、内容が素晴らしいだけにちょっと残念な想いが残ります。

 日本人のグローバルビジネスの場におけるコミュニケーションと言うと、積極的に発言ができないか、もしくはそれを過度に意識したがゆえに、ミョーにアグレッシブになるか、ということがあるようですが、やはり言いたいことを言うにしても相手をリスペクトして、メンツをつぶさないようにしながらも、ちゃんと言うべきことは言うというバランス感覚が重要だということです。

 また、日本人の細やかさは、どっちかというとマイナスの側面ばかりが日本国内では強調されがちですが、グローバルなビジネスの場では、そういうことを意識できる人が少ないがゆえに、そういったスタイルでのコミュニケーションが高く評価される場合と言うのもあるようで、そこは日本人なりの強みとして活用して行くべきだ、ともいえます。

 ということで、タイトルと内容のアンマッチという側面はあるものの、特にグローバルの場でビジネスをしないといけない人には、是非とも一読しておいて欲しい一冊だと思います。