活字アイドル論/小島和宏

 

活字アイドル論

活字アイドル論

 

 

 以前『中年がアイドルオタクでなぜ悪い!』を紹介して、アイドル本にありがちな、ひたすら自分が推すアイドルを礼賛しようとするスタンスではなくて、「プロ」のアイドルライターらしく、熱烈な「推し」を持ちながらも最後の一歩を踏み込まないスタンスが印象的だった小島さんの「活字のみ」のアイドル論です。

 この本では元々週刊プロレスの記者だった小島さんがどんな経緯でアイドル関連の著述を手掛けるようになったのか、プロレスでの取材・著述の経験がどのようにアイドル関連の記事を手掛ける際に活かされているのかということを語られます。

 この本の冒頭でも豪語されていますが、ほとんどアイドルの写真のないアイドル本という、以前だったら企画段階でボツになるような本なのですが、プロレスライター時代の経験を活かし、実際に現場にいなかったとしても、ありありとその時の様子を思い浮かべることができるような徹底した現場志向、ファン目線の著述を心掛けておられるということです。

 また、そういうスタイルを確立する過程で、取材対象となるアイドル本人たちとの距離感をどのようにするかという葛藤についても語られます。

 対象がアイドルなんで軽く見られがちですが、読んでいて沢木耕太郎さんがニュージャーナリズムの方法論への逡巡を思い出させたのですが、取材対象の対峙と言う意味で何ら変わることはないんだなぁ…と感じさせられました。