職業としての小説家/村上春樹

 

職業としての小説家 (新潮文庫)

職業としての小説家 (新潮文庫)

 

 

 村上春樹さんが小説家としてのご自身を語った本です。

 ワタクシ、元々、歴史小説を除くと、ほとんど小説を読まないこともあって、村上さんの小説も、実は1冊も読み切ったことがないのですが、一時期エッセイを読み漁った時期がありました。

 で、村上さんが、神宮球場のライトスタンドで“天啓”を受けて、小説家になろうと決意してから、現在に至るまでの小説家としてのご自身を語られます。

 エッセイを読み漁った印象では、村上さんってそういうことをしたがる人ではないと思っていたので、非常に意外だったのですが、小説家としてのご自身の取組を残そうという意識はあったようです。

 突然小説家になろうとしたこともあって、小説家としての方法論を学ぶことなく、いきなり書き始めたこともあって、小説家としての“セオリー”的なモノを踏襲していないこともあって、日本の文学界でも未だに異端であるワケですが、その村上さんが自分の“方法論”を語るということで、多分小説家を志そうとしている方には非常に参考になるんだろうな、ということと同時に、全く小説を書こうと、想像もしたこともないワタクシであっても、モノを創作するというプロセスを、非常に興味深く読めます。

 デビュー時点から、本業があって、デビュー作から、それなりの成功も収めたこともあり、他の作家とは異なるスタンスであることは確かなんでしょうけど、こういうことを自慢げに、ではなく乾いた文体で語れるところがスゴイなぁ…とミョーなところに感動してしまいました。