鉄道復権/宇都宮浄人

 

鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」 (新潮選書)

鉄道復権―自動車社会からの「大逆流」 (新潮選書)

 

 

 先日紹介した藻谷浩介さんの『藻谷浩介対話集 しなやかな日本列島のつくりかた
の中で、赤字鉄道の安易な廃止に警鐘を鳴らされていた宇都宮さんの著書を手に取ってみました。

 この本は、日本を中心とした鉄道の発展の変遷をたどると共に、ごく最近の世界における鉄道のトレンドを紹介されます。

 ワタクシが「鉄ちゃん」だった35年位前は、飛行機による旅客輸送の増大とトラックによる貨物輸送の増大に押されて、鉄道の優位性が急激に低下していき、どんどんと赤字のローカル線が廃止になって行くという寂しい時期だったのですが、昨今ではむしろ環境に配慮しした交通手段ということで、むしろ押し返し気味であるようです。

 鉄道の発展史の中で紹介されていたことで「鉄ちゃん」だったワタクシも知らなかったのが、私鉄がここまで発展しているのは日本だけで、海外ではかなり限られた状況でしか存在しないようで、ましてや私鉄が不動産業も兼ねて都市開発の役割も行って、自身で乗客を作り出す機能を担っているような例はありえないようです。

 特に最近のトレンドで、地方都市における空洞化を解消する有効な手段として、LRT(Light Rail Tram)という路面電車リバイバルが、老人などの交通弱者の救済の手段となっているだけではなく、渋滞解消にも役立っているということで、日本でも富山市で活用されているのですが、新しい都市開発の重要な要素として、鉄道が新たな役割を担いつつあるのはうれしいことですね。