知の仕事術/池澤夏樹

 

 

 作家の池澤夏樹さんが語る「知的生産の方法」です。

 この手の本って、最近では池上彰さんと佐藤優さんの共著だったり、梅棹忠夫さんや渡部昇一さんが書かれた古典ともいえる本も読んでみましたが、どれも知的好奇心を刺激されるモノでした。

 この本はフィクションを手掛けられる池澤さんの手によるモノだということで興味をそそられて手に取ってみたのですが、これまた素晴らしい本でした。

 池澤さん自身冒頭で、商売毒である「知的生産」の技術をなんで切り売りしなきゃいけないんだ!?ということで、これまでこういうノウハウ的なこと紹介するのは避けられていたということですが、昨今の世間における「知的生活」の貧困さに危機感を抱いて、ご自身のノウハウを紹介されようと決意されたということです。

 そもそも昨今は「情報」が取り沙汰されるばかりで、その一連の関連をとらえた「知識」レベルですら希薄で、さらに「知識」をベースに自分なりの考え方を形成する「思想」にまで練り上げることができなくなっており、そこまでの一連の知的な活動の方法を紹介されます。

 作家の池澤さんなので、本を中心にした知的活動を紹介されるのですが、いままで読んだ類書とは趣が異なる本の活用法が紹介されていて刺激的です。

 また池澤さんは電子書籍など最新のガジェットもそういう知的活動に積極的に取り入れられていて、それそれの特色を活かした使用法をされているのが印象的です。

 それも確固たる「思想」があるからこそ、手段に左右されない知的活動が可能なのでしょう。