悪の正体/佐藤優

 

 「知の怪人」佐藤さんがキリスト教的な観点から、悪や悪意に足をすくわれないための知恵を伝授します。

 なぜ“キリスト教的な観点から”なのかというと、善悪の判断基準が“自分と神”の間の関係において判断されるということで、シンプルだからだということで、どうしても多神教だとそのあたりの基準があいまいになりがちなようです。

 善悪の判断は神との関係にあるのに対し“悪”それ自体が為されるのは常に“人間と人間との関係”においてだとおっしゃいます。

 ただ、その判断は神に委ねられているとはいえ、ある単独の事象を見て、それが善なのか悪なのかを判断するのが難しいことも多く、そういうところにツケ込んでくる“悪人”もいるということで、なかなか難しいところです…

 「つけこむ」と言いましたが、必ずしも“悪”を為すという意図なく、寧ろ好意を以って為されていることが“悪”であることも少なからずあり、相手から為される“悪”だけではなく、自分自身が無意識に“悪”を為していることもありえるわけです。

 そういうある意味“相対的”な側面の多い“悪”を解きほぐしたということで有意義な本だと思いますが、異教徒的にはなかなか難解なところも多い本でした。