官報複合体/牧野洋

 

官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪

官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪

 

 

 元日経の記者で、アメリカをベースにフリーのジャーナリストとして活躍されている方の日米の新聞を中心としたメディアの比較論です。

 牧野さんによると日米のメディアの最大の違いは、アメリカのメディアは市民の視点での報道を重視するのに対し、日本のメディアは権力側の視点での報道が目に付くということです。

 元々メディアと言うのは、「第四の権力」と言われることもあるように、放置していれば都合の悪いことを隠して国民の権利を侵害しようとする誘引の働く“権力”に対して、それを監視して国民の権利を侵害しようとする動きを監視して警告を発することで民主主義を補完するという役割があったはずで、アメリカのメディアは、そういう“本来的”な役割に忠実であろうとすることが正義であると考えているようです。

 それに対して日本では、安倍政権のメディア統制が話題になりましたが、それも今に始まったことではなくて、牧野さんに言わせると権力側の「プレスリリース」だということで、結局権力からの「リーク」を垂れ流しているに過ぎないとおっしゃいます。

 よく太平洋戦争時の大政翼賛体制において、戦争を防ぐことができなかったメディア人の反省のコメントが取り沙汰されることがありますが、この本を読んでいると、全く反省しているとは思えず、また同じことが起こっても全く不思議じゃないという恐ろしさで戦慄を覚えさせる本です。