富士山1周レースができるまで/鏑木毅、福田六花

 

 

 世界的なトレイルランナーの鏑木さんが富士山を1周する100マイルのトレイルレースを着想してから実現にこぎつけるまでを紹介した本です。

 世界のトップクラスのトレイルランナーが参戦するレースというとモンブランでのUTMBなどの100マイルレースなんですが、2010年前後の頃、まだ日本ではあまりトレイルランニングが普及していなかった日本では100マイルレースは存在していなくて、何とか日本でトレイルランニングを普及させたいと思っていた鏑木さんが飛行機の上から富士山の稜線を眺めていて「ここだ!」と閃いたことからコトは始まったということです。

 医師でありながらセミプロのトレイルランナーでもありミュージシャンでもあるというマルチな活動をどれもハイレベルでこなす福田さんとともに富士山1周100マイルレースであるUTMFを立ち上げていくプロセスを追うのですが、以前このブログで紹介した東京マラソンの立ち上げを追った本でも、相当な紆余曲折があったということでしたが、こちらもまた東京マラソンとは異なる難題が山積で、スタッフもそれほど多く確保できない中、何とか日本でトレイルランニングを根付かせたいという一念でレースの実現へと突き進みます。

 そもそも平地でのマラソンと違って、道らしい道がなかったり、あったとしても誰が管理をしているか明確でなかったり、環境団体からのクレームがあったりと、想像を絶する困難が目白押しで、さらには第一回大会に向けて準備を進めていた2011年に東日本大震災に見舞われて中止を余儀なくされるなど、これでもか!?という困難を乗り越えて2012年の第一回大会の開催にこぎつけます。

 その後、2017年は処々の事情で開催が見送られたということですが、これまで5回の大会を開催し、2018年大会に向けての準備が進むなど順調に世界有数のトレイルレースとして成長を遂げたUTMFですが、いつか出てみたいなぁ、と思いつつさすがにキビシいかな…