国際法で読み解く世界史の真実/倉山満

 

国際法で読み解く世界史の真実 (PHP新書)

国際法で読み解く世界史の真実 (PHP新書)

 

 

 最近、できるだけ世界史に関する知識を厚くしたいということで、いろんな本を読んでいるのですが、そこでこの本が国際法と絡めてということで、大学時代に国際法を専攻していたワタクシとしては、これだ!ということで飛びついたのですが…

 この本の著者の方は、別に国際法の専門家というワケではないようで、著者来歴の肩書では“憲政史研究家”ということなのですが、政党「日本のこころ」の関係者ということで、そういうスジの方のようで、結局は大日本帝国礼賛がこの本の主旨のようです。
 
 日清戦争から太平洋戦争までの時期を中心に様々な事象を“国際法”を手掛かりに紐解
こうというモノなのですが、どうしても“大日本帝国バンザイ!”の方向に論理を向けようという意図があるため、歴史の解釈にせよ国際法の解釈にせよ、かなりムリがある感じです。

 うがった見方をすれば、国際法なんて詳らかに知っている人はほとんどいないと同時に多くの日本人はかなり国際法に対してポジティブな感じを持っているので、大日本帝国礼賛のネタとしては、いいモノを考えたなぁ、というのが印象です。

 デタラメとまでは言わないまでも、個々の事象における国際法の解釈についてはかなり乱暴なモノが多いので、国際法の解釈がこんなモンだと思われてしまうのは困るのですが、国際法を取り巻く力学というか、約束を守らせるチカラがあることが前提となるというのは、偽らざるところで、これについて国際法の法理という意味でツボをついたものと言えると思いますし、司馬遼太郎も『明治という国家』などで触れられていますし、この本でもいじらしいまでに国際法を遵守しようとする態度は、誇るべきものであることはアタマの片隅に置いておいてもらいたいモノです。