なめらかなお金がめぐる社会。あるいは、なぜあなたは小さな経済圏でいきるべきなのか、ということ/家入一真

 

 

 起業家で、2014年に東京都知事選に出馬したことでも知られる家入さんが、クラウドファンディングを駆使した、新たな“経済圏”の在り方を提唱した本です。

 家入さんはこの本で「小さな経済圏」ということで新たな経済の在り方を提唱されているのですが、これまでのような銀行や機関投資家などがそれなりに大きな規模で“効率的な”経済を志向する「大きな経済圏」の限界があちこちで散見されるようになった今こそ、個人が自分のやりたいことを、それを応援してくれる人の“顔の見える投資”をクラウドファンディングを通じて受けることで、個々の人々が精神的にも経済的にも充実した生活が送れるようにしようとすることです。

 家入さんは村上龍の『希望の国エクソダス』の「この国には何でもある。だが、希望だけがない」というフレーズを引き合いに出して、現在の日本の閉塞感を嘆いておられますが、クラウドファンディング、さらにはフレンドファンディングと考え方を進めて「お金がコミュニケーションと共に流通する、個人を中心とした、小さく、そし
てやさしい経済圏をつくることで、「各自が自由に、自分の幸せを追求できる」いい社会を目指そうということです。

 資本主義経済の蹉跌で“信用”を通過とする社会が志向される向きもありましたが、それをもう少し現在の経済との融合を図ることで、実現可能なよりよい社会を目指そうということで、かなり魅力的な提唱に思えました。