悪の指導者論/山内昌之、佐藤優

 

 

 「知の怪人」佐藤優さんが、中東史を専門とする山内さんと昨今の世界情勢について、トランプ、金正恩プーチンといった「独裁者」たちを手掛かりにして語られます。

 佐藤さんの対談本って、佐藤さん自身の知識量および守備範囲が圧倒的過ぎて、結局佐藤さんの独壇場になってしまうことが多いのですが、この本で登場する山内さんとはガップリ4つに組んでいて読み応えのある内容になっています。

 トランプ氏がアメリカ大統領に就任してから世界情勢がイッキに不安定化してきたと言われますが、お二方の見方だとトランプ氏は突然変異的に大統領になってワケではなく、これまでのアメリカの歴史の“結果”として生まれたものであり、トランプ氏一人を取り除いて問題が解決するということにはならないだろうということで、同様のことをISについてもおっしゃっています。

 この本ではトランプ、金正恩プーチンに加えて、トルコのエルドアン大統領、イランのハメネイ師を取り上げられて、その行動の背景となる考え方を紹介されているのですが、破天荒な行動の目立つトランプ氏や金正恩にしても、その背景となる考えを踏まえて考えると、実に“理性的”に行動していることがよく理解できます。

 そんな中での日本の対応の“劣化”具合もいちいち的を得ていて、これら“独裁者”達の“暴走”よりも、日本政府の“迷走”ぶりの方に恐ろしさを感じた次第でした。