孤独のすすめ/五木寛之

 

 

 作家の五木寛之さんが高齢者向けに書かれた本です。

 タイトルに“孤独”とありますが、それ自体がメインテーマというワケではなさそうで、如何に“老い”と対峙するのか、ということが重要なテーマのようです。

 最近は人生100年時代と言われ、心身ともに元気な高齢者が多いのですが、やたらと老いを恐れる傾向が強いようです。

 五木さんは高齢になっても「山を登り」続けることにこだわるのではなくて、自らの衰えを受け入れ「山を下る」ことを味わうことの意義を語られます。

 “シルバーデモクラシー”と言って高齢者の投票率が高いことから、為政者が高齢者優遇の政策をとりがちであることや、今はまだ手厚い年金制度によって守られていることについて、可能な人は自ら自立を志向し、こういう“優遇措置”を丁重にお断りすることを奨められています。

 そうじゃないと高齢者が一種の“特権階級”と受け止められて白眼視されて「嫌老」を招きかねないということに警鐘を鳴らされています。

 まあ、極端な見方だと思われる向きもあるでしょうが、高齢者が自動車事故を起こすたびに運転免許返納を強要するような空気が出てきており、そういう方向に向かいかねないという指摘は、的を得たところがあるような気がします。

 もうすぐ高齢者の域に突入しようというワタクシにとって、もう少し慎み深くあらねばと感じるところがある本でした。