「AIで仕事がなくなる」論のウソ/海老原嗣生

 

 

 昨日に引き続き海老原さんの著書を取り上げますが、今回は本業に近いところの内容です。

 AIの進化により比較的単純な労働がなくなるということについて、学者やアナリストが研究発表をされていますが、ホントにそうなのか!?ということと、AIが雇用に及ぼす影響を、ここ15年ほどとその後に分けての展望を紹介されています。

 そもそもそういう話ってAIに始まったことではなく、ITの黎明期も散々人間の仕事を奪うといったことが取り沙汰されていたきおくがあるのですが、フタを開けてみればそういうことにはならず、その分別に仕事が発生してきたということで、これまでの画期的な技術革新に伴う雇用の動向を振り返られています。

 さらに学者やアナリストの言う「AIが仕事を奪う」ということについての内容を検証してみると、あくまでもAIの技術進化とその内容に基づいた観点からに基づいたモノで、学者やアナリストがあまり個々の仕事の細かい事情を理解しないまま、ステレオタイプ的なイメージで評価したという側面もあり、あまりアテにならないんじゃないかということです。

 しかもAIの導入と言う高いコストをかけてでも代用するに見合うだけの効果のある仕事もある程度限られることから、ここ15年でいきなりほとんどの単純労働がAIに置き換わるというワケではなさそうです。

 ただ、ここ15年に限っても「クリエイティブ」「マネジメント」「ホスピタリティ」以外の業務のAIへの置き換えは着々と進んでいくのは間違いなく、「AIを使う仕事」と「AIのスキマを埋める仕事」を残してどんどん淘汰されていき、前者と後者の賃金格差は拡大していくようです。

 今後の日本社会は人口減少基調にあり、如何にAIをうまく活用していくかということも日本の国家戦略上不可欠であり、キチンと向き合っていく必要があるようです。