埼玉県立浦和高校/佐藤優、杉山剛士

 

 

 「知の怪人」佐藤優さんがご自身の出身校である浦和高校での講演や校長先生との対談などで構成された、浦和高校のスゴさをした本です。

 浦和高校というと多くの東大合格者を送り出す名門校として知られています。

 最近は多くの高校が大学の受験予備校と大差ない、大学受験に過度にフォーカスした教育を行い、名門大学への合格者数を競っていますが、その中で人格形成を主眼とする浦和高校の教育方針は異色と言えます。

 灘高校桜蔭高校など一部の私立高校ではそういう人格形成のを重視した教育方針を貫く高校も散見されます(それでもその数は決して多くはないようですが…)が、浦和高校は公立高校でそういう方針を貫き続けていることが異色感を際立たせます。

 そういった人格形成を重視したカリキュラムが、佐藤さんがよく言われる、グローバルスタンダードに合致した“エリート”を生み出す上で重要だということで、受験科目に無いからと言って文系志望者が数学を捨てたり、理系志望者が世界史を捨てたりといったことがなく、全人格的な“教養”を培うためのベースをしっかりと形成することができるようです。

 最近では従来からの名声だけで大学を選ぶのではなく、実質的に“良い”教育を行う大学を選び、企業側もそういう大学からの採用を積極的に行うなど、過度の“名門大”偏重が是正される動きが僅かながらもあるようで、日本でも途上国型の教育から脱却し、真に成熟した国家となるにふさわしい教育が求められており、そのためには浦和高校に見習うべきことが多いようです。