戦前の大金持ち/出口治明

 

戦前の大金持ち (小学館新書)

戦前の大金持ち (小学館新書)

 

 

 出口さんが『「全世界史」講義Ⅰ、Ⅱ』執筆の過程で興味を抱かれたという、戦前の事業家の何人かを紹介された本です。

 ダイジェスト的な経歴の紹介に出口さんが所感を添えられるという構成になっているのですが、まあ何にせよこの人たち、豪快、豪快!

 “パリの蕩尽王”の異名を持ち、事業で築き上げた多大な財産を一代で使い尽くした薩摩治郎八さんを始めとして、孫文に革命資金を提供し続けた梅谷庄吉さん、島根県安来市という決してアクセスが良いとは言えない場所に世界中から観光客が押し寄せる足立美術館を創設した足立全康さんなど、現在の尺度から言うと正気とは思えないおカネの遣い方を紹介されています。

 最近のおカネ持ちは、割と守りに入る人が多いですし、事業家も目の前の目標達成に汲汲としてチマチマした印象を受けがちですが、この方々は儲けたおカネを豪快に遣って経済を活性化させるという役割を率先して果たされていたようです。

 さらにこれらの人たちは事業において、現在にも通じる先進的な手法を駆使していたことが確認されており、そういう時代背景なんだと言われてしまえばそれまでですが、こういう魅力的な事業家たちがどんどん出てくれば、日本も少しは明るくなるじゃないかという気がするんですけどねぇ…