『日本史のツボ』など歴史を大きな流れとして紹介する著書で知られる本郷先生が、天皇陛下が生前退位をして上皇になられることになったのを受けて、“上皇”を手掛かりに日本史を語られます。
“上皇”が出現するのは19世紀前半以来、約200年振りだということなのですが、院政と言うと平安時代後期の印象が強いですが、持統天皇の頃から脈々と江戸時代まで続いていたということです。
“上皇”というと天皇を退位して、というのが我々の感覚ですが、あまりその“位”自体に大きな意味はなく、その時期の政治を取り仕切ることができる“人”がいれば、その人が実権を握るということで、本郷先生は世界でも類を見ない“ホンネ”のシステムだと指摘されています。
承久の乱で後鳥羽上皇が隠岐に流されて以降、朝廷は形式的な権威を残すのみだったという風にとらえる向きが多いですが、実はその頃朝廷は、持明院統と大覚寺統が切磋琢磨して、よりよい政治である“徳政”を志向していたということで、そういう脈々と受け継がれていたものが、建武中興だったのかもしれません。(本郷先生自身は、建武中興は単に幕府の自滅という見方をされていますが…)
どちらかというと、上皇という位の形式的なモノよりも、どういう背景で権力を握るに至ったのかというメカニズムが説明されていて、“上皇”ということに限らず、日本的な権力構造がよくわかる本となっています。