勉強法/佐藤優

 

 

 先日紹介した『思考法 教養講座「歴史とは何か」 (角川新書)』と対を成す「知の怪人」佐藤優さんのカルチャーセンターで行った講義が元になった本で、あちらが「歴史」を媒介にしていたのに対し、こちらは「情報分析」を媒介にしていて、如何に世の中を生き抜いていくための“教養”を身に付けるための“勉強”をするかということを語られます。

 第一、二講において、佐藤さんのインテリジェンス活動の経験を踏まえて、どのような発想でインテリジェンス活動をしていたのかということを紹介されています。

 印象的だったのが、インテリジェンス活動が精緻化するのは、その活動が国家の生死を左右するような国においてであり、例えばイスラエルのインテリジェンス活動が、現在世界有数なのは、そういう事情があるからであり、戦前の日本のインテリジェンス活動が世界に冠たるモノであったのに対し、今の体たらくは…というのも、そういうところに原因があるようです。

 そしてそういう発想…“教養”…を身に付けるための勉強法を紹介されているのですが、佐藤さんはご自身の著書や池上彰さんとの対談本でも、再三“教養”を身に付けるためのショートカットは存在しないとおっしゃっているのですが、それなりに“教養”を身に付けるための要素というものはあって、

  ・日本語力
  ・古典
  ・歴史
  ・外国語

なんだということですが、今の日本の教育ではかなり偏りが顕著で、自分で意識して、欠落した部分を補っていく必要があって、そうでなければ、グローバルな環境で成果を出すことは難しいようです。

 それにしてもこの本、スパイの現場でのヒリヒリするようなやり取りから、浪人をしてもやる気のない学生をどうするかと言った下世話なハナシまでが違和感なく同居していて、佐藤さんの懐の広さに感嘆させられる内容となっています。