幕末史/半藤一利

 

幕末史 (新潮文庫)

幕末史 (新潮文庫)

 

 

 『昭和史』の半藤さんが慶應丸の内シティキャンパスで行った特別講義で語られた幕末についての講義の内容をまとめた本です。

 このブログでも半藤さんの幕末についての著作を何冊か紹介していますが、半藤さんが戦時中に疎開をしていたのが父方の祖父母がいた長岡で、その時に祖父母から“西軍”の行状を聞いて育ったことで“反薩長”的な史観を育むに至ったことを公言されてるので、この本でも“反薩長史観”が炸裂するのかと思いきや、意外とプレーンに淡々と語られます。

 ペリー来航から西南戦争終結までの25年間を語られるのですが、その間ってたったの25年だったの!?と改めて驚くほど濃密です。

 半藤さんはこの本で権力の推移の作用の源みたいなものを明らかにしようとすることに注力されているように伺えて、そういう推移の理由みたいなものがよく理解できます。

 明治以降の歴史教育の主流をなす薩長史観に基づいた“常識”とは多少ニュアンスが異なりますが、半藤さん自身の反薩長史観は抑えめにして、丹念に出来事をつなぎ合わせる事で歴史の“作用点”みたいなものをあぶり出されており、プレーンに幕末を理解するためには格好のテキストなのかも知れません。