格差社会を生き抜く読書/佐藤優、池上和子

 

格差社会を生き抜く読書 シリーズ ケアを考える (ちくま新書)
 

 

 「知の怪人」佐藤優さんが、子どもの貧困問題に取り組む池上さんと対談した内容をまとめた本です。

 佐藤さんは多くの対談本を出版されていますが、その面白みは、如何に対談の相手が佐藤さんと互角にやり合っているかということに尽きると、個人的には思っているのですが、池上さんは、佐藤さんがトピックに、そこまでの前提知識を持ち合わせていないこともあり、ガップリ四つに組み合って、なかなかの迫力を見せた対談となっています。

 それはそれとして、現代の日本では一旦貧困に陥ってしまうと、そこから抜け出すのはかなり困難であるというのはよく言われているのですが、その原因が複合的な要因で構成されていることが指摘されています。

 貧困な状況に陥っている人の子弟が高度な教育を受ける機会がなかなか得られないということはよく言われますが、高度な教育だけではなくて、普段、触れ合う人との振る舞いや、何か課題に直面する時の意欲など、様々な場面で、経済的に豊かな環境で育った子供と比べると、ハンディになってしまうことがあることを指摘されており、格差の固定化につながる要素について指摘されています。

 しかも日本では「働かざる者食うべからず」じゃないですが、貧困層が施しを受けるにあたっての風当たりの強さもあり、現代の日本において貧困から抜け出すことの難しさを指摘されています。

 かなり日本人のココロの狭さを指摘されているようでココロ苦しいのですが、何とかそういうところを克服して、せめて生まれ来る子供たちの機会の均等は確保したいところです。